お兄ちゃんと妹 3 【白布賢二郎】

お兄ちゃんとお弁当 ページ30

　
　
　
　
｢やっばい遅刻する！！いってきまーす！｣




｢あら…！？A！ちょ、ちょっと待って！｣






ローファーに足を入れて




少しズレている靴下を直す




あ、今日確か数学の小テストだっけ




テキスト持って行ってたっけな…




少し不安になって




カバンをガサガサと確認していると




後ろからお母さんの慌てた声が聞こえた




お母さんが焦ることは珍しくて




なにか忘れ物でもしたかと後ろを振り向いた




けどお母さんの手に握られていたのは




私が使っているのと色違いの弁当の包みだった






｢……一応聞くけど、それダレの？｣




｢賢二郎のに決まってるじゃない｣




｢そっか。うわ時間やば、いってきます！｣




｢待って待って！お兄ちゃん朝練後の分しか持って行かなかったの！お願いA、届けてあげて？｣




｢忘れたアイツが悪い。せいぜい空腹で苦しめばいい｣




｢もーそんなこと言わないで！ほら、ね？｣




｢…ちっ、今度クリームパン奢らせてやる｣




｢気を付けてね〜行ってらっしゃい！｣






ただでさえ急いでいるのに




余計な荷物が増えてしまった




いつもなら耳の高さで髪の毛を結ぶのに




今日は下ろしている




なぜなら時間がなかったから




ランニングと同じペースで走りながら




青に変わったばかりの信号を渡った




髪の毛が跳ねて鬱陶しいけど




それよりも袋の中で箸の音が




ガチャガチャうるさいこの弁当の方が




よっぽど鬱陶しかった




チャイムがなるまであと19分




この家から学校までは約25分




白布A、ただいまピンチです
　
　
　
　
　
　
　

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