お兄ちゃんと妹 3 【白布賢二郎】

妹と帰り ページ29

　
　
　
　
｢……？鍵閉まってる｣






いつもなら開いているはずの玄関は




しっかりと鍵がかけてあって




めんどくさいと思いつつカバンから鍵を取りだして




ガチャリと右に回して鍵を開けた




中はいつもよりも静かだし少し暗くて




誰もいないことを物語っていた






｢…おいA？｣






基本的に俺が一番最初に家に帰ることはまず無い




大抵はAが最初で




その次が泥まみれになるまで遊んできた双子だ




まれに双子が先なこともあるが




基本的にはAが鍵を開ける




どちらもがいないこと自体とても珍しかった






｢(用事ってなんだ？)｣






いつものように半強制的に




部活に連れてこられると思っていたから




いないことにも驚いたけど




まさかまだ帰っていないとは思わなくて




一応家族であり妹なわけだから




多少の心配が胸を走る






｢……チッ｣






静かで冷たいリビングに




少し乱暴にエナメルバッグを投げて




いつもならしないガサツな座り方で




ソファに腰掛けた




バレーノートを書いて指の手入れをして




時計を見ればもう7時




部活が早く終わるとは思わなかったものの




それにしたって遅すぎるアイツの帰りに




なぜかとてもイラついた…＿＿






いや、






【なぜか】なんて本当は分かっている






｢…彼女、ねぇ｣






笹部が発した勘違いの言葉




大方顔しか見ていないから




苗字までは把握していないんだろう




手紙まで押し付けられてホントいい迷惑だ






｢妹じゃないならな…｣






一人しかいないリビングに




俺の独り言は静かに溶けていった




その数分後




地味に疲れた顔をしたAが帰宅して




ちゃんと帰ってきた安心感と




いつもよりも遅い時間に帰ったことに対するストレスと









帰ってきたことに対して安心した自分にイラついて




睨みながらおかえり、と言った
　
　
　

　

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