お兄ちゃんと妹 3 【白布賢二郎】

妹と睨み ページ26

　
　
　
　
｢あ！ゆかりちゃぁん！この前のデート楽しかったよ〜！｣




｢あれ、りかちゃん前髪切った？かわいーじゃん！｣




｢ねぇまどかぁ…彼氏と上手くいってないらしいじゃん？｣




｢れなちゃーん！｣




｢こころぉ！｣




｢なぎさちゅわぁーーん！！｣






移動教室のために廊下を歩けば




こいつは最低3人の女子に声をかける




そしてその相手の名前は




感心するほど毎回違う




前回は“なぎさ”なんていなかったろ




コイツの女誑しなところ(こういうところ)が嫌いだ




カバンに(勝手に)入れられた手紙を




ビリビリに破いて




トイレに捨ててやろうかと本気で思う




でもそれと同時に少し違和感も覚えた




いつも必ず女子に言う【アノ】言葉が無い






｢……気は済んだか？｣




｢ん？んー、ま！今日はいっかなぁ｣




｢今日はアノ言葉言わないんだな｣




｢アノ言葉？……あぁ！｣






＿＿＿“俺ん家来ない？”ってヤツ？




ヤリ〇ンで有名なコイツは




声をかけた女子に必ず“ソウイウ”お誘いをする




けれど今日は誰にもその言葉をかけなかった




この野生の猿みたいな男にも




ソウイウ欲が落ち着いてる時があるんだなと思った




1年生の教室が並ぶ階にある化学室




その扉が見えたその瞬間に




いつもヘラヘラと笑ってるはずのコイツは




目がスッと冷まして俺を睨んだ




いきなりなんだ、と睨み返せば




答えることなく早足になって教室に入って行った

変な一言を残して







｢……絶対、奪ってやるから｣




｢…は？｣







なぜだか【なにを】とは聞けなかった




聞く必要が無いと無意識に思ったのか




はたまた…









＿＿妹(アイツ)が近くにいたから、か
　
　
　
　

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