第９話 熱心に ページ11
それからというもの、慣れない新大陸に慣れるために５期団は大忙しだった。
慣れないといっても、人手の少ない新大陸では新人も貴重な人材だ。
狩猟はもちろん、採取や学者先生の護衛まで、様々な依頼をこなしていった。
「アンタ、大丈夫なの」
最初の可愛らしい彼はどこへやら。
このチョンジョングクは、かたくなにAのことをヌナ呼びはおろか、名前すらも呼ばずに、いつの間にか「アンタ」呼ばわりになっていた。
それでも、今こうしてリハビリのためにトレーニングエリアで歩行の練習をするAを気遣うあたりは、優しい奴なのだ。
「大丈夫！！前よりはあるけ…ってうわあ！」
これならいけると装備している太刀を抜こうとした瞬間大いによろめく感覚。
思いっきり転ぶと覚悟したその時、ふと後ろから逞しい腕に支えられていることに気づく。
「ほら、どこが大丈夫なんです？」
「いやあ〜〜、ごめんごめん。やっぱり抜刀はまだ無理かあ……」
項垂れるAをみて、ジョングクは溜息を吐いた。
「そんな焦る必要もないって。５期団もきたし人手は前よりあるんだから」
「そう、なんだけどね。でもやっぱりそれと同時にゾラ・マグダラオスがやってきてここ最近は前とは様子が違うし……。いや、これも言い訳か。私、何の役にも立てないのが怖いんだよ」
支えてくれてありがとうとお礼を言ってジョングクの腕から抜け出した彼女は、徐々に車椅子を使う機会が少なくなったものの、やはりまだ立つだけでも心もとない様子だった。
重たい装備を付けていれば尚更だ。
「無理して狩猟に出ることが役に立つことだとは限らない」
「う〜〜んやっぱり痛いとこつくなぁジョングクは。……そういえば、スリンガーの扱い方にはもう慣れた？」
「あからさまに話題を変えないでよ」
彼女はこの無謀な復帰プログラムをやめる気は毛頭ないようだ。
「いいのいいの、それで？どうなの？」
「初日で既にマスターした」
「わ、生意気」
「われらが指南役A氏はどのくらいで習得されたんです？」
いたずらっぽく笑うジョングクはとても器用だった。５期団の指南役に就き、あらゆることをサポートしてきたが、流石推薦組ということもあってその実力は本物だった。
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作者名：もちこ | 作成日時：2021年2月10日 2時
