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"私が大好きなエイトじゃない"
「はぁ…」
柏ちゃんのその台詞が、何度も何度も頭の中でループする。
いつになく険しい表情、でもどこか辛そうだった。
何も言えない私に、最後に迷ったように「…ごめん」と残して、
そのまま離れていった。
私はそれが苦しくて仕方がなくて。
柏ちゃんが本心でぶつけてくれたのは、
自分でもはっきりと分かっていたことだから。
だから、突きつけられたその事実から
逃げたくても、逃げられなかった。
私はそのまま一人で会場を後にして、
まっすぐ家に帰る気にもなれず、街をフラついていた。
こんな日に限って気温は高くて、蝉の声がうるさくて、
夏がジリジリと私を責め立てているように思える。
そのまま、どれくらい経ったんだろう。
あの通知画面を思うとスマホも見たくなくて、
日が傾いて影が伸びて、それがやがて闇に溶け込んでも、
私はどうしたら良いのか分からないままだった。
…すると、突然、
「…！」
ポケットの中で携帯が震える。
反射的に取り出すと、それは自分が仕掛けたアラームだった。
通知よりも先に時計を見て、ハッとする。
…準々決勝の結果発表の時間だ。
私はものすごく嫌な予感がした。
…予感っていうか、自覚、と言うべきか。
確かめてしまいたくない、と思ってはいても、
手が勝手にニバスタのサイトを開く。
結果速報のページを開いて、
息を詰まらせながら下へとスクロールしていく。
自分達の、エントリーナンバー。
一つずつ、数字が近付いていって、
「…」
そして、遠ざかっていった。
私達の名前は、どこにも無い。
…落ちた。
勝ち進めなかった。
落ちて当然、と客観視する自分と、
チャンスを逃してしまった、と一丁前に悔しがる自分と。
でも全部、矛先は自分に向けられて。
私が、もっと頑張れていたら…
「…っ」
泣きたくもないのに、涙が出てこようとする。
街中ということもあり目立ちたくなくて、
必死に鼻をすすって耐える。
耐えながら、でも、さすがにもう、帰ろうかななんて。
自分の部屋の中で一人、
涙を流したいと思ってしまった。
私はそのままスマホを閉じて、ようやく自宅の方向に歩き出す。
家が近付いてきて、段々と人通りも少なくなっていくごとに、
それまで誤魔化せていた悲しさやもの寂しさが
大きくなっていった。
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黒葡萄(プロフ) - にのちゃさん» ありがとうございます！初めから読んでくださり有難いです…！頑張ります！ (2022年2月27日 2時) (
レス) id: 9de473efb1 (このIDを非表示/違反報告)
にのちゃ(プロフ) - 初めまして！一昨日から読み始めてやっと追い付きました(笑)読んでいてホッコリしますし、クスッと笑える面もあって最高です(*´∀｀*)更新、楽しみにしています。応援してます( ≧∀≦)ノ (2022年2月25日 14時) (レス) id: 43bde75e07 (このIDを非表示/違反報告)
黒葡萄(プロフ) - みけねこさん» コメントありがとうございます。またお読みいただけて私も嬉しいです！ (2022年2月24日 16時) (レス) @page11 id: 9de473efb1 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ(プロフ) - 更新ありがとうございます！最近また読み返していたばかりだったから、とっても嬉しいです。これからの更新も楽しみに待ってます。 (2022年2月23日 3時) (レス) @page8 id: d311d92dc2 (このIDを非表示/違反報告)
黒葡萄(プロフ) - ayayanさん» ありがとうございます。ただいまです！ (2022年2月23日 0時) (レス) id: 9de473efb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年2月21日 18時
