猫と車とナンパ事件(1) ページ6
火が出るほどの熱気に包まれた客席、座る観客の目線は全て真ん中へと注がれていた。
湯気が漂ってきそうな、アスファルト。
まるで大砲でも打ち上げられたのかと、思ってしまうほどの重厚なエンジンの音がなる。
目で終えないほどの速さで色鮮やかな、レーシングカーが走り去って行く。
「本当は、来ちゃダメなんだからね兄者さん」
観客の大きな歓声が聞こえる中、椅子の横に置いてある、カバンに向かってため息混じりに告げる。
そう、我が家の飼い猫兄者さんと私は休日のこの日"カーレース"へと来ていた。
事は数時間前にさかのぼる。
________________
「うぅ、書けないよぉ〜」
今でも泣きそうな声で、デスクに顔を預ける。
俯きつつ、震える手で小さなカレンダーを手に取る。
カレンダーにはあと一週間後の日にちに、赤くペンで丸がされ下にはデカデカと"〆切！！"と書かれていた。
「そもそも、今にも走り出しそうな車の絵って……私の得意なジャンルじゃないしぃ」
今にも、物に当たりそうになりつつ、それはダメだと言い聞かせ、震えながらも深く深呼吸する様にため息をつき、周りを見渡す。
小さな部屋にはまるで落ち葉が落ちているみたいに、絵が描かれた紙が床やデスクに散らばっていた。デスクには冷めきったコーヒーカップも寂しげに置かれている。
「なぁ〜」
「うぁあ！？先生まって、まって！足、足汚れてる！」
いつもは閉められている扉が少し開いていたのか、その隙間から入って来たのは細身の猫。
しかしその猫の足は、どこで汚して来たのか絵の具で汚れており、下書きされた絵に美しいほどの鮮やかな"足跡"をつけていた。
このままでは、デザインがダメになると考えた私は澄まし顔をしている猫を持ち上げ、お風呂へと走る事にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
和市(プロフ) - そろそろまた、お話し載せるかと…、お話しか、新作か… (2018年5月21日 23時) (
レス) id: 44e4c00f72 (このIDを非表示/違反報告)
和市(プロフ) - んっふふw書いてるとき、楽しかったです。いやぁラスト番外編で書こうかなぁ。 (2018年4月24日 21時) (レス) id: 9bbeddd50b (このIDを非表示/違反報告)
和市(プロフ) - もしかしたら、と言いますか、読みづらいかと…。リハビリを言い訳にもできますが…精進ですね！ (2018年4月14日 21時) (レス) id: 9bbeddd50b (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 和市さん» いえいえ！！はい！これからも楽しみにしてます！q(^-^q) (2018年3月26日 22時) (レス) id: fead2c36b6 (このIDを非表示/違反報告)
和市(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます！そのように言って頂けると、作業が捗ります。まだまだリハビリなので拙いところもありますが、今後も読んでいただけたらと思います！ (2018年3月26日 22時) (レス) id: acdc7c7eb1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和市 | 作成日時：2018年3月21日 5時
