思わぬ出会い。 ページ4
side_伊野尾
「伊野尾先生!待合室に男の子が…」
最後の診察が終わり、帰る支度をしていた頃
血相を変えた看護師が走ってきて一言
“ 男の子がいる ” と。
研修医を終え、この大学病院で
小児科医として働き始めて早6年。
こんな出会いは初めてだった。
「…ぇ?いつからぁ〜?」
脱いだ白衣をもう一度身に纏い
連れられるままに診察室を出れば、
確かに小さな男の子の姿があって。
左手にお人形さんを抱えながら眠っていた。
「ぼくぅ、どこからきたのぉ?」
とりあえず起こさなければ何も分からない。
気持ちよさそうに目を閉じている小さな子を起こすには気が引けたけど、
もしかしたら迷子で…親御さんが探してるかもしれないから。
そう思い込んでいたのに
…憶測はすぐに外れた。
両腕に触れながら体を揺すると、すぐにパッと目を覚まし慌てだしたその子。
言動は小学一年生程のレベルだろうか。
…それにしては小さいし、持ち上げた身体は軽すぎる。
おまけに「たたかないで」「ゆるして」と
涙目になりながら訴えてきたその子に違和感しか覚えなかった。
「よしっ、とうちゃーく。」
「……ありがと」
さて、診察室に連れてきたのは良いものの
これからどうしようか。
「りょうすけくん、おうちの方は?」
「…でていけっていわれたの」
ビンゴ、とも言えるのだろうか。
きっとこの子は家庭内に何らかの問題があって。
日々親から精神的、身体的暴力を振るわれてきたんだろう。
今日の天気は曇りのち雪
こんな寒い中、運良く辿り着いたのがここで良かったよ…。
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作者名:らら | 作成日時:2021年3月16日 20時