テキトーと適当 (ページ20)

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「一瞬ちくってするだけ。…頑張れない？」

涼「んっ、………泣」

顔が肩に乗っかってるから表情は見えないけど
ぐずぐずさせた鼻から想像できるのは
きっと涙も零れているだろうということ。

「今日いっぱい頑張ったもんな？」

涼「…ん」

「これで最後だよ、終わったら伊野ちゃんに褒めてもらおう？」

涼「……いのおちゃん」

「うん、きっと沢山褒めてくれるよ」

渋ってても逃がして貰えない、と思ったのか
はたまた伊野ちゃんパワーなのか……

顔を上げてこちらを見たかと思えば
濡れた瞳をごしごしと拭きながら
小さく「がんばる」と決意してくれた。

「お、偉いなぁ。じゃあ左手は中島くんにあげて？…そう、んで顔はこっち向けてな。」

中「なるべく痛くないように頑張るから、涼介くんも動かないように頑張ろうね」

「こっちの手繋いでるからぎゅってしていいよ」

案の定駆血帯が巻かれるとまたぐずぐずとしたけど
針が刺さっても暴れることはなく、

涼「……ったい、」

「痛いなぁ、あとちょっとで終わるよ」

中「指先疲れちゃってない？…大丈夫かな、」

漸く終わる頃にはキョトンとした顔。

「くらくらしない？」

涼「…わかんなっ、……きもちわるい…」

「……おっ、と。あぶな…」

どうしたんだ？…と思いながら覗き込むと
採血の影響か、張ってた気が解れたからなのか
椅子からずり落ちるように倒れる身体。

間一髪、落ちてしまう前に掴まえると
目を瞑りながら
ぎゅっと白衣を握ってきた。

「大丈夫大丈夫。ちょっとびっくりしたね」

中「少し休憩してから戻りますか？」

「そうだね、」