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包容力 ページ30

***


「...はぁ」


家に帰って一通り家事を済ませる
お風呂から上がりソファーに座ってため息をついた

...櫻井さん、まだ帰ってきてなくてよかったな


「気持ち切り替えなきゃ...バレないように...っ」


櫻井さんに余計な心配かけないよう
すぐにでも溢れそうな涙を堪え深く息を吐く


「っ...ん、よし」


パンッと頬を叩き立ち上がったと同時に
玄関のドアが開く音が聞こえた


櫻「ただいまー」


「おかえりなさい^^
お風呂沸いてるからどーぞっ」


いつものようにニッコリと笑みを浮かべ
夕飯を温めるためキッチンへと向かった


櫻「A」


「んー?」


櫻「...ちょっとこっちきて」


「え?」


けれど、櫻井さんまでもキッチンに入ってきて
私の手を取りソファーへ座るよう促された


櫻「さすがに今日疲れちゃってさ...
少しでいいからギュッてさせて」


「え、うん...」


恐る恐る腰を下ろすと優しく抱きしめられる
...と同時に、リズムよく背中を叩かれた


「櫻井、さん...?」


櫻「...泣きたいときは我慢しちゃダメ」


「...!」


櫻「バレないわけないでしょ?」


いつも以上に優しい声で話しかけてくれる櫻井さんに
私は我慢できずボロボロと涙を流した


「う、っ...ふぇぇ......ッ」


櫻「ん...よしよし」


***


櫻「...なるほど、あの監督さんか」


しばらく櫻井さんの胸の中で泣き続け
ようやく落ち着いた私は今日の出来事を全て話した


「潤くんにも、迷惑...かけちゃってっ...
監督さんも凄く怒ってたし...私...!」


櫻「いっぱいいっぱいになっちゃったんだね

泣くのもずっと我慢してたんだろ?
顔見た途端すぐわかったよ...よく頑張ったね」


そう言って優しく微笑み頭を撫でてくれる

監督さんを否定するわけでもなく
変に私を持ち上げることもしない櫻井さん


“よく頑張ったね”


その言葉がどんな慰めよりも嬉しくて
櫻井さんの包容力を感じ改めて好きだなと思った


「...櫻井さん」


櫻「ん?」


「...ありがとう、大好き」


櫻「お?珍しい笑
俺もだよ、A」

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作者名:momoiro | 作成日時:2021年3月31日 21時

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