変な人【花霞】 ページ47
空になった2人分のマグカップはしばらくの間放置されている。
人の家に上がり込んだのだから洗い物くらいしてくれてもいいと思う。
洗い物は家事の中でも1番嫌いだ。
洗うだけで必ず一枚は落として割ってしまうし、手も荒れるし…とにかく悪いことしかない。
『ボクがやると割っちゃうんで、洗い物やってくれませんか?』
「え〜?俺家事全般とかやったことないんだけど〜」
『はい?』「え?」
「逆にやったことあるように見えてたの?」と言いたげな顔をされたが、寮の時のどうしてたんだって話
ボクはスーパー家政婦みなくんがいたからなんとかなってたけど、夢羽先輩が家事をやっている印象はないし、マジでどうしてたんだろ…。
「俺らの家事は湊がやってたし…。」
ここで衝撃の事実
みなくん、ボク以外にも雇い主がいたって…浮気じゃんか。
そうか、撮影が夕方までなのに帰りが遅かったのはそれのせいか。当時は何回聞いても教えてくれなかったから、ファンとの不祥事じゃないかってヒヤヒヤしてたっけ。今考えるとみなくんに限って不祥事なんてありえないよな。
『はぁ、みなくんかわいそ』
「そう思うならお前もちょっと自立したらどうなのよ」
『いやいや、先輩こそ自立したらどうなんですか』
この感じだと話は平行線になりそうだ。これに気づいてもなお続けるほど先輩もボクもバカじゃない。
ボクのこの発言を最後になり、これ以上会話が続ことはなかった。
歩叶先輩に最初に会った時はベテランオーラがあって、「話しかけづらい」と勝手に思っていた。
実際に話してみると、案外波長があって話していて苦じゃなかったし、なんなら楽しいくらいだった。ナチュソンの中で考え方が一番近かったのは歩叶先輩だった。相談に乗ってもらうことも少なくなかった。…というよりは、他の2人はそもそも大人しく相談を聞いてくれなかった。光希先輩は…そんなことなかったんだろうけど。なんとなく話しづらかった。だって3年生だもん、怖いじゃん。
「ねね、暇だから映画でも見に行かない?」
『…ボクとですか?そこらへんでナンパしてればいいのに』
「ナンパするのにも体力がいる〜」だの「それはプライドが〜」だの、いろいろ話し始めた。
まぁ、映画分のお金はもちろんその他諸々奢ってくれる好条件だったため承諾してしまった。
「おけ〜、じゃあ俺着替えてくるわ、場所と時間はあとで送っとく」
そう言っては歩叶先輩は足早に部屋を後にした。
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