キャラ作り【花霞】 ページ45
戸棚の奥の方にある来客用のマグカップは背伸びをしてギリギリ届くか届かないかくらいな距離に置いてあった。
いつも自分が使っているものと、来客、歩叶先輩の分のコーヒーを淹れるところ。
さっき歩叶先輩にコーヒーを飲めるか聞いたところ、「花霞が飲んでるやつなら飲めるでしょ。」と言ってきたので、おそらくカフェオレとか淹れるとでも思っているのであろう。
残念ながら、ボクはコーヒーは断然ブラック派
アイドル時代はそれなりに「キャラ」を作っていたので、「コーヒーとか飲めません!カフェオレしか飲んだことなくて…」という甘党キャラを貫いていた。
そのせいで共演者からもらうものといえば、クッキーやらケーキやらと甘いお菓子ばかりだった。実際は甘いのも嫌いではないが、「これを食べたら太るかもしれない」という考えが邪魔をして最後まで美味しく食べられた経験がない。
それよりかはカロリーメイトとか、カップラーメンの新作とかを買ってきてくれる方が有り難かったりする。無論、そんなこと言えたものではないが。
『歩叶先輩、淹れてきましたよ〜。』
「…花霞ってブラック飲めたんだっけ?」
予想通りの答えが返ってきた。と言いたいところだが、正直楽屋ではちょくちょくブラック飲んでたし、気付いてくれるんじゃないかなぁ〜とか思ってた。
そんなことなかったけどね。
『ボクもともとコーヒーはブラックの人ですし。』
「いやいや、テレビでコーヒーはおろかカフェオレしか飲んだことありません発言してたじゃん。」
『キャラですよ、キャラ。もしかして、あの情報鵜呑みにしてたって感じですか?』
そう言ってやると歩叶先輩はボクを見て「うそだ〜」と呟き始めた。どうやら、この容姿からブラックを飲んでいる想像がつかないらしい。確かに最近は仕事の都合上ココアの比率のほうが高いけど、帰りのコンビニとかでも全然買って帰るし。
「花霞も…日々成長していくんだね…。」
『なんでそんな孫を見るような目で見るんですか。早く飲まないと冷めちゃいますよ?』
「あ、うん。いただきま〜す」
歩叶先輩はマグカップを少しずつ傾けていき、まるで絵から飛び出してきたかのように美しい姿でコーヒーを飲んでいた。
コーヒー飲んでるだけでなんで絵になるんだよイケメンじゃんか。
こうしてボクは密かにメンバーの顔の良さに日々嫉妬心を募らせていたりする。
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