恋愛トーク【花霞】 ページ39
お互いいつも通りではない状態で家にあったそこそこ高いワインを飲んでいく。
本当は1人でゆっくり味わって飲みたかったけれど、こうなったらもう家にある物全部飲む勢いまで来ていた。
「はは、花霞大丈夫そ?目の焦点あってる?」
『ん…大丈夫ですよ。舐めないでください。それより、話の続きしてくださいよ』
「花霞って恋愛トーク興味あったっけ?もしかして恋してるの?」
恋しているかと言われ、なんとなく答えづらくなる。
青春を生きるために使ったボクには恋愛というものがうまく理解できていなかった。せいぜいドラマのお芝居でやる程度で、本質的な物は何もわかっていない。
『うるさいですね…今は歩叶先輩の話でしょう?』
「あはは、言うようになったね〜花霞。そーゆーのも嫌いじゃないよ」
会話のような、会話じゃないような。
会話としては成り立っているのだろうけれど、どちらも受け答えがうまくできていない状態だ。酒というのは恐ろしい。
歩叶先輩は、自分の恋愛の話を進めながらもボクにしっかりと飲ませに来ている。
きっと、ボクが覚えていて、それを間違ってでも本人に話されたら困ると思っているのだろう。
そんなに信用がないのかと悲しくなるのと同時に、夢羽先輩への配慮的なものがそこまで行き届いていることに驚く。彼だって、酒が入ればボクと同じような状態になってもおかしくないはずなのに、そこまでやるのはやっぱり好きだからだろう。
その長い長い片思いを近くからずっと見ていた身としては、報われてほしいというのが切実な願いだ。
『告ってみたらいいじゃないですか。』
「言うね〜花霞、そんな簡単なことじゃないってのに。」
簡単じゃないことは重々承知だ。
だけど、このままずっと片思いを続けて、次に進めない歩叶先輩を見ているのは正直辛い。
それだったら、結果はどうであれ、言ってしまった方が楽になれるし、次に進めると思うのだ。それがきっと、一番いい選択だと思うし。
「ん〜まぁね。花霞が言おうとしてることはわかるよ。でもね、俺はもうちょっとだけ、片思いを楽しんでおくよ」
そう言ってグラスの注いであったワインを一気に飲み干した。
そして床に寝っ転がり、眠る体制に入っている。
この人なら、介護するのにはだいぶ楽だ。光希先輩や夢羽先輩に比べれば…本当に楽だ。
そんなことを考えながら、さっさと寝室へと運んだ。
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