チョロい【桃也】 ページ36
あー、家帰りてえー。
いや、まあここが俺の家だから帰るも何も無いんだが。
実家だ。実家。
あの厳しい母やド不健康マンの父に会いたくなる。
依月ちゃんにもっと細かくメンヘラ退治の方法聞いておけばよかった。彼女は適当なアドバイスしかしなさそうだが、それでもあるとないでは天とすっぽんだ。兎と亀も驚くほどには。
意味の分からない言葉をつらつら並べて暇を潰しながら、海貴の話を右から左。
長い長い。束縛彼女でもそんなに一文長くないって。ネチネチした男は嫌われるぞ。
全く終わる気配が感じられないので、俺はボケーっとしながら素数を数えていた。
ただ100を超えた辺りから面倒になり、数えるのを諦める。
さて、いよいよ暇だ。
腹が減ったな。海貴が作ってくれたらしいし、それ食いたい。
そう思うと腹がぐうと鳴ったような気がした。
『なあ、海貴』
「なに」
じとりと睨まれるが、気にせず言った。
『折角海貴が作ってくれた飯あんなら、早く食べたいんだけど』
なんとなく上目遣いで言ってみると、人が変わったかのようににやにやとした笑顔になる。
「そうだろうそうだろう。そんな桃也にはとびっきりのご飯を食べさせてやる!」
メンヘラモードから切り抜けたようで、鼻歌を鳴らしながらキッチンへ向かっていった。
いやちょっろ。33歳男性の上目遣いでようその気になったな。
思ったより頭が緩いのかもしれないと思ったが、実際国語以外彼奴はほぼ点取れてなかったような気がするので合っているはず。
美術でも描けるのに用語やらは絶対覚えない過激派だった記憶がある。そして丸暗記の俺である。ついでにノー勉の清瀬。
青蘭学園がそこまで偏差値の高い高校ではなかったため、デザイン科は大分無法地帯だった。
男でアイドル関連のデザインしたいと思う奴なんて、そう多くない。それにデザイン科はセンスが無いとぶっちゃけ普通科に放り込まれたりと、荒波だらけだったので大抵変人しか残らない。
一年生の時にいた普通の奴は、普通科に行くか変人になるかしか無かった。
いや本当にまじ。因みに教室には至る所にそういう本が隠されていた。俺も何度か拝借したことがあるので詳しくは触れないでおこう。
キッチンの方からm電子レンジが温め終了を知らせる音が聞こえてきた。
やっとこの減った腹を満たすことのできる喜びに、俺は一日の疲れが癒やされるようだった。本当に、本当に疲れた。
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