明日【花霞】 ページ25
同じ空間にいるのにも関わらず、この数分で空気感がコロコロ変わりすぎていた。最初はなんだかわからないけど穏やか。次はボクの親関連の発言で一瞬空気がピリついて、それをいち早く察した光希先輩が"いつも通り"でカバーして元には戻せなくても最悪の空気感は免れた。かと思うと今度は光希先輩とみなくん何か隠してる疑惑が浮かんできて、そこでまた空気が変になった。そして今に至る。ボクと落知先生が高級そうなテーブル越しに向かい合って座っている。この空間には2人しかいないのに、飛び出して行ったみなくんと光希先輩の分のお茶も合わさって4つのコップが置かれていた。
『えっと…お腹空きましたよね。こんな時間まで先輩がすみません。』
少しの皮肉を自身の先輩に込めて、落知先生には謝罪しておく。
「あー、光希くんってあんな感じなんですね。ステージ上と印象があんまり変わりませんでした。」
『…そうですね。光希先輩は怒らなければあんな感じですよ。いつもへらっとしてるのに、ちゃんと欲しい言葉をくれるような人です。』
最初に言葉に詰まったのは、光希先輩のことをどこまで話していいかわからなかったからだ。
実際のところ、光希先輩は裏表ないような純粋そうな性格をしていて、嘘もつかないと思う。
つかないと思うっていうのは、「嘘をつかれててもわからない」ってこと。それくらい演技上手っていうか、なんでも徹底してやってる感じがある。メンバーの中にも光希先輩の同期の中にも、光希先輩の素を見たことがある人なんていない…と思う。まぁ、これは裏がある前提の話になってしまっているが。
そういえば、お弁当の件謝っておこう。
『あの、今日のお弁当、ごめんなさい。すっごい楽しみにしてたんですけど、やっぱり親の恐怖には敵わなくて…。親が怖いなんて、情けないですよね。すみません。』
普通にしていたつもりなのに、体は震える。
涙が出てきそうになって、必死で堪えていたら声が裏返りそうになって焦った。
「…気にしないでください。明日のあるんですから。」
「明日がある」という言葉に驚きが隠せない。明日なんてないと思っていた。
嬉しくなって、また涙が出そうになった。本当に、いつからこんなに涙もろくなったんだ?
『あ…ありがとうございます!お弁当楽しみです!』
本気で安心したから、今までよりも声が明るかった気がする。
今浮かべている笑顔も、自然に出てきたものだということが自分でも嬉しくなった。
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