帰りたい【桃也】 ページ24
なぜ俺は成人男性2人のハグシーンを見なければいけないんだろうか。
いやまあ確かにイケメンは好きなんだが。でも別にそれは存在してるだけで良いというか、別に俺カップリング厨じゃ無いというか。
あまりに気まずいので湊くんに目線で助けを求める。
何となく意図が伝わったのか、軽く首を振られた。そっちの先輩だろ……俺からしたら直接の面識0の後輩だぞ。
乾燥する唇を軽く舐める。ただただ気まずかった。
何とかという様子で離された美作先生は、疑っているようで、でも無垢に首を傾げていた。
この空気感で呑まれないのは、流石とでも言えば良いのだろうか。平然を装って深呼吸をする。
乾いた目を何度か瞬きしていると、右目のコンタクトがずれてしまった。こんな時に限って。
鏡を見に洗面所へ行こうとも、この空気感をぶち壊すように動ける気がしない。無理矢理瞬きと眼球を動かすことでコンタクトを戻すことに成功した。
長時間つけていると目が疲れるから、そろそろ外したい時間帯だ。
「落知先生、お茶飲みます?緑茶でよければ出しますよ?」
目薬を差したいと思いつつまた瞬きをしている瞬間に言われ、一瞬言葉に詰まった。
わざわざ申し訳ないと感じながらも、頼むことにした。正直喉がカラカラだ。
美作先生が言葉を発したおかげで、部屋の中の空気が和らぐ。
吐いているようでつっかえていた息を吐き出し、ポケットからスマホを取り出す。
別に用なんて無いが、少し現実を逃避したくなった。
「そうだ、先輩ってアイドル好きですよね? おすすめのアイドルとか居ます〜?」
突然横からひょこりと現れた光希くんにそう言われた。
俺最近のアイドル鈍くて〜などと言うので、少しだけ考えた。考えてはみたがあまりにざっくりすぎて、ジャンルか何かを示して欲しかった。
ノンジャンルでおすすめと言われれば無数に浮かぶが、面倒だったので1番最初に浮かんだ地下アイドルの名前を答えておいた。
初めて聞きましたと嬉しそうに言うが、ぶっちゃけ内心どうでも良いとか何じゃないかと疑いたくなる。なんか、得体が知れないんだよな。
耐えられないと思ったのか、湊くんが腰を上げて帰って行ってしまった。裏切り者。
置いていった上着を渡しに光希くんが行ってしまったので、美作先生と2人という気まずすぎる状況が出来上がってしまった。
ああ、家に帰りたい。海貴にいつもありがとうとでも伝えたやりたい。切実に願うばかりだった。
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