賢いんだか【桃也】 ページ12
「えっと、落知先輩……で、あってますかね?」
俺は__
……なんでこう、今日はついていないんだろうか。そんなに世界は俺が嫌いか。
目の前の彼、蓮実光希は屈託のない笑みを浮かべていた。
イケメンだから許されるとでも、と言いたい所だがぶっちゃけ許せそうなのが腹立つ。このイケメンが。スッキリしながらも丸い柔らかな目が可愛らしく控えめで決して低くはない鼻もで幼くも見えるが顔配置は大人びた男性らしいイケメンだな!! やっぱ許せねえ。
「__俺のこと知ってたりします? いや、__」
何を言っているんだ此奴は……分かった上で俺に話かけたんじゃないのか?
『いや、朝話してますけど?』
「……はい?」
はい? じゃないのだが。
落知なんて苗字早々いないぞ。そっちは俺の事を知っていたようだし、朝の時点「あ、落知だ!」って気付かないのか。
「朝って、具体的には……いつ頃……?」
『面と向かって話したわけではないですけど、電話越しで話したじゃないですか。貴方の後輩のスマホで』
最後の言葉を強めに言うと、彼の眉がぴくりと動いた。そもそも電話していたのを忘れていたというセンか。
確かにあれは朝、というかオールした深夜テンションと言われたら納得だ。だから許すなどしないが。
「え!?あれ落知先輩だったんですか!?」
『そうですけど』
信じられない! と言わんばかりの顔をして見つめてくる。そんな顔をされても、俺は事実しか語っていないのだから何も言う事はない。
彼はあわあわとした様子に変わり、顔色も青ざめ始めた。
「もしかして……いや、もしかしなくても、俺すっごい迷惑な電話掛けたかもです」
本当にその通りだ。成人男性がかけるとは思えない電話だった。本当に。
そうですね、と言うとひえ……と今にも声が零れそうな表情になった。愉快。あ、人の恐怖を面白がってる訳じゃないぞ。イケメンの顔からしか摂取できない栄養素があるよなっていう話だ。
ごめんなさいとこじんまりしながら何度も軽く頭を下げられた。
社交辞令的に全然、とにこやかに返す。まあ、俺の表情筋が思った通り動いた事はほぼ無いが。
流れで美作先生の体調について尋ねた。この人が電話をかけてきたのだから、今の美作先生の状態くらいは知っているだろう。
顎に手を当て、うーんと視線を右上にやりながら唸る。
「よかったら、うち来ます?」
それは、"元"アイドルだとしてもスキャンダルにならないん……だろうか……
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