流星群の奇跡【後編】

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東の空が明らんできたのがうっすら目に入る。
ニカにベッドを譲り、ソファで朝を迎えた。
浅い眠りに、寝た気がしなかったが、この薄暗くなってきた窓の外を見て、確かに時間は過ぎていた。
こんな風に携帯を握りしめ眠ったのは何年ぶりだろう。


ニカが寝室に行ったあとも藤ヶ谷とメールが続いた気がしたが、そこからの記憶がなかった。


明かり窓から射す光を足元に浴びて、上体を起こす。
秋深し夜より昼の方が短い。
この暁の空は、何時頃だろう。


握っていたスマホのボタンを押して時間を確認すると、時刻はまだ6時頃をさしていた。


あんま寝てねーな。


ドラマが入っていない限りは、早朝からの仕事は比較的少ない。


もう一眠りすることも出来る時間帯。
にもかかわらず、いつもと違い目がぱちくりしてる。
いつもは死ぬほどねみーのに。



でも、足が重い。四方八方に向かう感情に体がついてこない。


取り敢えずシャワー浴びっか。



藤ヶ谷で止まったメール画面に目をそっと落として、浮ついた心を自制するように強く握りしめた。


糠喜びだと分かっていても緩んでしまう口元をぐっと閉じた。



このメールの内容、必要そうなものはアイツに言っとかねーと。
まるで昔やってた番組のようだ。
観てたなー。ブラッ〇メール。
圧巻の文章力だった。


あんな可愛い内容は思いつきもしないが、
ただただ続くメールを途切らせたくなくて、
話を膨らませた。



今日は俺もニカも個人の仕事で
藤ヶ谷に互いが会う予定はなくて、ちょっと安心する。


自分という存在に向けられるいとおしむ目を見たいのに見たくない。


そんな狭間の心根を隠すように、顔からシャワーを浴びた。



＊



ニカと別々の仕事に向かい、仕事の合間も藤ヶ谷とメールが続いた。昨日寝ちゃった、ごめんと返ってきたそのメールが何よりも嬉しかった。


今日もこのメールを返していいんだって。
こんな乙女心を持ち合わせてた自分に照れくさい。



「また早く二人で逢いたいな」と甘い内容には上手く返せず「予定合わせような」と誤魔化してしまった。
時間なんて作るもんだし、合わせるもんだ。



でも今の俺には、それをできない理由がある。
明確な約束ができず、心苦しくなる。
藤ヶ谷が今の俺に逢いたいのは確かなのに、
それを阻む俺は……おじゃま虫でしかない。



複雑な想いを秘めた二階堂の姿のまま俺は、藤ヶ谷と二人でのラジオ収録の日を迎えた。
保管しておいたパンフレットを、鞄に入れて。

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