流星群の奇跡【後編】

97 K ページ48

続いて後ろから足音が聴こえる。
靴底の擦れる音……



あん時と同じ高さでふとまた自然と夜空を見上げてしまう。



この場所から始まったんだな……



非現実的な日常が



「北山、」


幻想的な夜空に見蕩れてると、後ろから名前を呼ばれ腕を引かれた。
引かれた腕に導かれるように、振り返る。




「……っ、！」




すぐ一段下に藤ヶ谷が居て、




そのまま…………



目を閉じる間もないまま……


唇に柔らかいものが触れた。


それは、藤ヶ谷の


分厚めの唇。しなやかに塞がれた。



目が自ずとぱちぱち瞬きをする。



目に映るのは、藤ヶ谷の目。
藤ヶ谷の目も僅かに開いていた。


星のようにキラキラして
風のようにゆらゆらして
月のように優しかいそれに吸い込まれる。



一瞬、とは何秒を指すんだろう。



時間で言うと多分、3秒くらい。



離れていく藤ヶ谷に目を奪われる。
言葉は出なかった。
でも名残惜しいと思ってしまう。



「……この場所で欲しかったんだ」



この場所で……？



「だから昨日は寝た振りしちゃった。」



そっと耳から頬にかけて手のひらで覆われる。
藤ヶ谷の親指がそっと俺の目の下を往復するように撫でた。


「寝た振り……、なんで？」


寝落ちしたんじゃ、偶然じゃないの？
ここを通ったのも……



「いつか一緒に住むでしょ？そしたら引っ越すし、そん時になれば、俺の部屋には入れねーじゃん？大切な思い出の場所が他人のものになるのやだし」



それに、ここは……
俺には北山しかいない、って
愛せないって教えてくれたきっかけの場所でもあるから。




ニカに場所聞いてさ。




そう、照れくさそうに笑った藤ヶ谷。




風が冷たくても、一瞬で心も体も温めてくれる。




「……あ、？！流れぼ…し…っ」



そう言いながら夜空を見上げた藤ヶ谷の唇を今度は自分から塞ぐ。




曇り空でも
星がない夜でも
風が強い夜でも、



奇跡のように星は降る。




歩道橋の脇では、車が走る音。



でも、世界に居るのは二人だけだと錯覚するように



夜空は二人を包んでくれた。




流れ星とニカがくれた奇跡の一ヶ月に感謝した
その夜、藤ヶ谷の部屋でひとつになった。



ローストビーフを食べるのも忘れて……



声が枯れるまで、



藤ヶ谷に愛された。



痛かったけど、最初は上手く入らなかったけど
藤ヶ谷は優しく根気強くて、なんつーか藤ヶ谷らしかった。



……もちろん北山ベアには目隠しして、な？




END

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