流星群の奇跡【後編】

68 K ページ19

「……夢、か」


変な夢を見た。
中学生か高校生ぐらいの自分の。
朝学校で体操着を忘れたことに気づいて、他の体育が被ってないクラスに体操着を借りに四苦八苦走り回ってる夢だった。
そこで目が覚めた。
結局、体育の時間が始まった方が先か借りれた方が先か分からず、目が覚めた。


この夢を遮ったのは……


───♪♪♪♪♪



音楽だった。



「やべっ」



インターホンの音。
その音によって、目がゆっくりと覚めた。
……今何時だ？
目を袖で擦る。
ぼんやりとした視界が広がっていく。
ゆっくりと掛け時計に目を向ければ、ぼんやりとした意識が次第にくっきりと晴れていき、短針を捉えた。既に夜は深い時間帯に入っていた。



こんな時間に誰だろう……


恐る恐る、うたた寝してしまっていたソファから起き上がり、ドアホンまで小走りで向かう。
ボタンを押す前に、小さなモニターに表示された人物を見ると



「……ふ、じがや？」



キャップを目深に被って夜なのにサングラス。
マスクで顔を隠しても隠しきれてない人物が映し出されていた。


今夜、仕事が終わった後、会うことを断っていた。
藤ヶ谷は横尾さんと出ていったから、きっと横尾さんと食事にでも行ったのだと思ってた。
だから、今夜はまだメールのやり取りをしていなかった。仕事が終わってから。
俺も予定があるていで、メールを送っていなかった。



会いに、逢いに……来てくれたんだ、



起きたばかりのぼんやりした脳みそでも、
そればかりは分かる。
この解除ボタン、応答ボタンを押すわけにはいかず、
ソファに急いで戻りスマホを手に取った。


藤ヶ谷のトークルームの通知が3になっている。
万が一にも既読にする訳にはいなかず、そのまま長押しして内容を確認することなく、スマホの画面を消した。



できることなら、開いてすぐに電話をしたい。
いや、ンなことよりも、このモニターの応答ボタンを押してしまいたい。



……でも、押すわけにはいかない。
少し離れた冷蔵庫に反射してる姿。
この場でこの姿をアイツが見たら、驚くだろうし誤解を招き兼ねない。


この部屋の主が不在状態で、メンバーだけが居るなんて、どう考えたって不自然だろ。



何度も繰り返し鳴るインターホンに、スマホ。
その両方に反応することができず、俺はモニター越しの藤ヶ谷をただ、傍観することしかできない。



悔しさから、下唇を噛んで自分の気持ちを抑えるのに必死だった。


お願いだから……
帰ってほしい。

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