流星群の奇跡【後編】

50 K ページ1

「いい？かけるよ？」
「おう、お願いします」


藤ヶ谷の告白を「やっぱり勘違いだった」と取り消されるのが嫌で、俺も好きなのに保留するのが嫌で、早急に返事を伝えることにした。



二階堂が提案してくれた、俺の言葉で…伝えたい。
二階堂に伝達してもらうのは、すげー照れるけど
それでも、コイツも同性愛に理解があるから抵抗はなかった。



こうして入れ替わってなかったら、
起きなかった出来事に非現実的さを帯びながら、裏紙とボールペンを準備した。



顔を見合わせ、一緒に頷いて
藤ヶ谷の登録番号を押す。
スピーカーにして、二人とも息を殺してコール音が途切れるのを待った。


お願いだから、出てくれ…


ローテーブルに、ふたり並んで
床暖房で温まった床に直で座る。


二人とも自然と正座になってしまってるのは、この緊張感の表れだと思う。


他人事のはずなのに、
同じように隣の二階堂からも緊張感が漂ってきて
マジでイイヤツだと今更ながら改めて思い知らされた。




『……はい。』



……っ、
藤ヶ谷……
出てくれた……
よかった……、



ぷつり、止んだコール音に続いてスピーカーから聴こえたのは、少し低めの藤ヶ谷の声。
付き合いが長いからなあ。
普段電話なんかしねーのに。
電話越しの声でも分かってしまう。
藤ヶ谷の窺うような声色に。



そんな声さえも好きだ、と心の底から湧き上がってくる。





元々書き記していた文言を、二階堂が俺の声で読み上げる。
マイク部分が俺の存在を拾ってしまわぬよう、ゆっくりボールペンを握る。



「ごめん遅くに。さっきはありがとう。無事帰れた？」
『ああ。こっちこそありがとう。帰れたよ』



当たり障りのない出だしに、スピーカーから漏れる藤ヶ谷の声のトーンが高くなったように感じた。
緊張が少し緩んだのだろうか、そんな風に感じた。
相変わらず無駄に声はセクシーだし、電話越しだとそれは倍増してる気がして、俺の鼓動は早くなるいっぽうだけど。



紙にペン先を滑らせる。
走り書きの字は、若干汚いが読めなくない。
それを、二階堂が読み上げる。



「ならよかった。今大丈夫？」
『ああ、もちろん。』
「今日はありがとう。気持ちすげー嬉しかった。さっきは驚いて、すぐに返事が出来なくてごめん」
『いや、俺も急にごめん。でも、気持ちは冗談じゃない。本気だから。それだけは分かってほしい』




藤ヶ谷の柔らかい声が、俺の耳に届く。
本気だと、そう言ってくれた。

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