流星群の奇跡【前編】

48 K ページ48

今頃食事でもしてるのだろうか。
急な誘いなんて、藤ヶ谷はもしかして抱えきれないような悩みを持っているのかもしれない。


その悩みを俺に打ち明けてくれるとは思いがたいが、昔の俺らのような関係にもし藤ヶ谷が戻ったと思ってくれてるのなら、それも有り得る。


ニカだからじゃない。
ニカを求めてる訳じゃない、と。
何とか理由を探すのに、今日一日頭は支配されていた。



俺ってちいせーな。
マジで。



調べた流星群。しし座流星群が次にある。
晴れるといいけど…そこに合わせて、元に戻れねえかと二階堂に話そうとも考えていた時だった。


落ち着かない俺は、俳句を作ったり、歌詞を書いたり、気を紛らわせていた。



インターホンが鳴った。
すぐその音に立ち上がって、モニターを確認すると俺の姿が映っていた。



急いでセキュリティを解除する。



待ってられなくて、クロックスを履いて、玄関を出る。
数分して、手前のエレベーターから人が一人降りてきたのが見えて、それは見慣れた人物。
俺だった。



「ミツ！」


俺の声で俺の名を呼ぶ、
駆け寄りその二階堂の腕を掴んで、部屋まで引き摺りこんだ。



もう、早く聞きたい。
アイツは何で急に俺を誘ったのか……


もしかして、結婚を考えてる、なんて相談されたんじゃないか……


何通りもの、良くない情報、良い情報が頭の中を交錯して占めていて、限界だった。




そんな俺の切羽詰まってる心の内を知る由もないニカは、ミツ痛いわ！と俺の腕を掴んだ。



「わり」



取り敢えず、お茶を出す。



ソファに座ったニカはずんっと見上げてきた。
俺の顔で。
両手を握られる。



「心して聞いて」


その言葉に、小さく頷いて、息を呑んだ。



「ガヤに好きだって告られた。付き合ってほしいって」
「はっ？！？！」


はい？！
え？！
あ、？
マジで？！嘘だろ？！


喜びが先にきた。あと、信じられないという疑い。
戸惑い、言葉は出ない。



「マジだって。つか、ミツたちって上手くやってたんじゃん！ガヤはミツが好きだったんだね！」
「いや、上手くなんてやってねーよ、俺は……」



それは、喜んでいいこと、だと
言い難いことだった。
だって、ほんとに俺は藤ヶ谷と上手くなんてやってねーし、好きになってもらえるようなことは何一つしてない。



もし、もし、告白がほんとなら……



それはきっと……


「それでなんて答えたんだよ」


ニカ、だから。

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