流星群の奇跡【前編】

40 F ページ40

「あんなに楽しかったのに……」


なんでメールはこんなにも素っ気ないんだろう。


二階堂あーごめん!ちょっと予定たてこんでて、約束できないわ。ほんとごめん!



シャワーを浴びて、ソファに座り天井を仰ぐ。
ニカを想っていても、浮かぶのは北山の顔……
でも、ニカが気になる。


このメールはさっきまで会ってた時との温度差を俺に与えてきて、楽しかったのは俺だけだったんだろうか、と落ち込む。



なにがキングだ……
聞いて呆れるな。
長年の片想いを拗らせてるくせに
他のやつを気になって、今夜なんて触れたい、とまで思った。



頭に置いたこの、手のひらが熱い。
そのまま引き寄せて、抱きしめたくなるような衝動には自分でも驚いたし。



いつも北山へ抱いてた想い、それと重なりすぎて自分で自分が分からなくなる。



「……わた、寝てるかな」



もう日付は越えていた。
整理ができない感情に、明日の仕事まで影響するのが嫌で申し訳ない気持ちを抱えつつ、スマホの履歴をタップした。




何度か鳴るコール音。
ワイヤレスイヤホンで繋げたまま、片耳にイヤホンをさしこみ、ソファにごろんと横たわる。




『ひゃーい』


プツンと鳴り終えたコール音のあと、聞こえてきたのは渉の眠そうな声。
うん、良かった……
ごめん、わた。



「ごめん、寝てた？」
『や、……あ、今日えいぎゃ、映画だっけ？』



さすがわた、覚えててくれたことにぽんっと心が温かくなる。
優しいな。ほんと。
右耳に入るその声は、俺のこのよく分からない頭の中を整理させてくれる気がする。



「うん。」
『どうだった？』
「うん。楽しかった」
『じゃあ良かったじゃん。でも声暗くない？』



わたは目が覚めたのか、話し方がいつも通りのスピードに変わった。
それに乗せられ、気持ちも綻んでいく。


クッションを腹に抱えて、足をクロスして肘置きに置いた。



「うん。何か楽しい後の喪失感…っていうか、その後のメールが素っ気なくて」
『あー、まあ、ニカって割りと淡白じゃん？』
「……そうなんだけどさ。でも会ってた時は……マジで可愛かったんだって」
『……浮気者め』



笑うなんて、ひでー。
俺だってずっと北山一筋だったのに、
こんな気持ちに自分でも戸惑ってるのに、わたは結構ずけずけとつついてくる。



『そんな浮気者の太輔に、近々な目撃情報。』
「なに？」


腰に痺れがきて、ころんと寝返りをうった。

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