流星群の奇跡【前編】

18 K ページ18

俺の姿の二階堂の藤ヶ谷に対する朝からの不自然すぎる行動ではなく、匂いを気にするなんてちょっと、いや凄く驚いた。



俺の奇行の愚痴をニカに漏らすかと思ったのに。



「……今日なんか北山さんおかしくない？」
「あー。おかしいね。毒キノコでも食べたんじゃない？」


わざと、聞いてみた。
それに答えた藤ヶ谷は涼しい目元で笑う。
俺への扱いにちょっと、また胸が痛んだ。
俺が藤ヶ谷へちょっかい出す。構う、その結果は……"毒キノコでも食べた"と揶揄されるんだなぁって。



中身はニカだが、藤ヶ谷は俺だともちろん思ってるしなんだが虚しくなる。


よかった、今まで頑張らなくて。
今までの一定の距離感を保っていた、保つ努力してた自分は正解だったんだと確信した。




ニカ、無理だわ。
藤ヶ谷と俺の仲を取り持とうなんて。
こんなにも分厚い壁があるんだから。


俺の姿で頑張っても嫌悪感を抱かせるだけだ。
ニカにやっぱ忠告しねーと。
戻った時に、余計拗らせた状態になってたら
到底俺には収束させられない。



「あのさ、ニカ。実はお願いもあるんだけど」
「なに？」


視線の先の俺は、千賀とオセロをしてる。
押されてるようで、悔しそうに口の端を歪めていた。
千賀は愉快そうに「あははっ」と笑ってる。




「今日北山に晩御飯誘われたんだ。良かったらニカも来てくれない？」
「……え？」



アイツ、もう晩飯まで誘ったのかよ。
違和感すぎんだろ、藤ヶ谷は案の定困った顔をしていた。



二階堂を誘う、ということは
俺と二人きりが嫌なんだろうな。
……当たり前か。断ればよかったのに。



「なんで俺？」
「渉にメールしたら渉夜別の仕事が入ってんだって。」


やっぱ横尾さんだよな。
つか、もうメールしたのか。
そんなに俺と二人きりは嫌なんだと突きつけられ、悲しくなる。
でも、今は二階堂だ。
何とか笑わなければ。





「北山と二人きりはちょっと……」



心底嫌そうに目を伏せた藤ヶ谷。
上手く関係を築いていたと思っていたのは俺だけだったんだ。
距離があっても、馴れ合わなくても、信頼しあってると、尊敬しあってると、尊重しあってると思ってきた。



そんな俺の、思おうと思い込もうとしていたことが簡単に崩れ始める。



「…ったく、よし！3人で行こーぜ！」



そう言って藤ヶ谷の肩にぽんっと手を置くと、
藤ヶ谷は心底嬉しそうに目を開けて、可愛い笑顔を見せた。その顔は安堵したように見えて、また胸の奥を攻撃された。

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