流星群の奇跡【前編】

14 K ページ14

日が昇っても、夢じゃなかった。
現実だった。
洗面台の鏡に映る姿は、俺が思い描いてたものじゃなかった。


朝起きて、緊張しながらも鏡の前に立ったのに
その期待は見事簡単に裏切られた。


にーっとしても、不機嫌そうなメンバーの顔。
抑えられない溜め息をまた朝から吐き、レバーを押して、顔を洗った。




交通渋滞にあっちゃやべーから、早めにスタジオへと来ていた。
タクシーから地下のエントランスで降りて、受付を通り、エレベーターで上がる。



二階堂の服は昨日少しだけ拝借できたから、二階堂の服をきちんと着ている。
問題は二階堂だ。
あいつ、俺の姿でジャージでこねーよな？
今日はレッスンの日じゃねーし、あれだけ釘をさしておいたから大丈夫だとは思うけど。



そんな不安を抱きながらも途中、自販機で緑茶を買って、案内板が出されていた取っ手を引いた。



自分が一番乗りだと疑わなかった。
なのに、扉のこちら側では何とも突飛な光景が繰り広げられていた。



「はよー…」


語尾が弱くなる。
なぜなら、俺が、藤ヶ谷にピッタリくっついていた。

えなに……羨ましい、


じゃなくて、なんなんだ？！これ！
この絵面違和感しかねーだろ！


一番乗りかと思った部屋には
俺の姿の二階堂と、千賀。
そして藤ヶ谷が既にいた。



「おはよー」



いつも声だけであまり目を合わせてこない藤ヶ谷。
本を読んでると視線は落としたままで反応することばっかだったのに。
今朝はしっかり顔を上げて俺の顔を正確にはニカの顔を捉えた。



分かっていても嬉しくて、思わず口元が綻ぶ。
藤ヶ谷、今日早ーんだな。


反対に、馬鹿みたいに藤ヶ谷にくっついてる俺の姿の二階堂にはよそよそしく、無反応気味だ。



つーか、俺がンなことするわけねーだろ！
あのバカ！
千賀は興味なさそうに、何やらスマホ触ってるし。
いいのかよ、お前。彼氏が他の男に懐いてんぞ、と関係を知ってしまった今、気になる。




「ひ、ニカ！おはよう」



いや、千賀さん。
今宏光って言いかけたよな。
ぱっと藤ヶ谷を見ても気にはしてなさそうで、ヒヤッとしたが何とか大丈夫のようだった。




千賀が見立ててくれたのか、ニカが着てる服はまだマシでそれにも同時に安堵した。




「……千賀ちょっといい？」
「うん」


控え室の掛け時計を見ても明らかにまだ時間は早い。急いで千賀を手招きして、こそっと耳打ちした。



視線の先の藤ヶ谷も助けを乞うようこっちを見ていた。

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