170枚目 ページ37
｢本当に懲りない奴っ｣
｢ま、まあまあ｣
アズマの投擲した湯桶により、ヤマトは完全に仕留められたのだろう。盛大に湯の跳ねる音に続いて魔王の情けない叫び声が響き、折角の風情とやらも台無しになっている。
ぷんぷんと頬を膨らませる従者に、ルイカは困ったような笑みを向けた。
｢ヤマトのあれはいつもの事じゃない｣
｢ルイカ姫！もう、慣れちゃ駄目なのっ！｣
｢あはは……｣
瞬時に言い負かされては、大人しく湯に浸かるのみだった。上下関係の緩さは良いときもあるがあまり良くないときもある。
リオナはそんな二人を前に、ただ効能を聞いたばかりの濁り湯を不思議そうに両手で掬っていた。指の隙間から漏れおつる感覚に目を細め、温もりに浸る。雪のように白い肌をほんのりと桃色に染め、雫の滴る黒髪は一つにまとめ結上げられており、なんとも扇情的だ。大抵の男なら悩殺できるであろうその美貌に、日向ノ国の二人も初め、息を呑んでいた。だが、胸へと視線を下ろすと仲間意識が芽生えたようだ。それは無論、岩場の隅でお湯に浸かるソフィも同じこと。巨乳など敵視以外の何者でもなかったから、助かった。
そんな折、ふとリオナの紅い瞳が姫を捉える。
｢貴女、ここでも包帯を取らないの？洗わないわけでは無いと思うけれど｣
純粋な疑問を含んだ言い方に、気分を害するでもなくルイカは微笑んだ。
｢私の目元、結構傷跡が大きくて。あまり人様に晒せるものでは無いなあって。確かに、ちょっとだけ痒い時とかはありますよ｣
ふうん、とリオナが相槌を打とうとした矢先、ソフィのあっ、という声とアズマの耳ピクリと動くそれが一致する。きょとんとするルイカの手を取り自身に寄せては、リオナは古びた柵の外……男湯ではなく、旅館の茂みの方面へと視線をやり、眉をひそめた。
｢だ、誰か来ますぅ！｣
｢ソフィもこっち来なさい。……ここ、今日は貸切よね｣
目線を外さないまま静かにルイカに問えば、こくこくと熱心に頷きが返される。アズマも怪訝そうにしながら付け足した。
｢従業員……てわけでも無さそうだわ。変な臭いがするから｣
まったく。いい湯だっていうのに邪魔が入ったものだわ。
少し不満そうにリオナが立ち上がれば、身体にしっかりと大きめの手ぬぐいを巻き付けた。周りの困惑する空気にふわりと微笑んでから、すぐに凛として柵に向き直る。
｢はああっ！｣
刹那、柵が砕け散った。
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モモハ(プロフ) - そらもちさん» あざーっす！アッもしかしたら中だるみなんでもないッス！てへ！(棒) (2019年4月28日 11時) (
レス) id: 98af2b3beb (このIDを非表示/違反報告)
そらもち - 面白いっすね！続編も読むぜよ(｀・ω・´) (2019年4月28日 10時) (レス) id: 35f31302c7 (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - ひかげのこさん» ありがとうございます！めっちゃ張り切ります(*´ω｀*) (2018年12月12日 17時) (レス) id: 0785378cec (このIDを非表示/違反報告)
ひかげのこ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました！更新頑張って下さい！ (2018年12月12日 15時) (レス) id: 256366ff3c (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - 866さん» がんばります！(ﾃｽﾄｦﾔｯﾂｹﾀﾗ() (2018年10月8日 18時) (レス) id: 937a2c5722 (このIDを非表示/違反報告)
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