166枚目 ページ33
あたしは人目をはばからず、一直線に悲鳴の元へかけ行く。目立つ尻尾は足取りに合わせてぴょこぴょこと上下し、身体の平衡を保つのにちょうどいい。人の目を引いてしまうのは元よりだ。
獣人はいつだって奇異の目を向けられる。好意的であろうとそうでなかろうと、いつだってそれは厄介なものだった。だからこそ、ルイカ様のもとに仕えることは素直に幸せなことなのだ。
守りたいのに、上手くいかない。
チ、と心の中で悪態をつきつつ。意識を前の方へ向ける。後ろから追いかけてくる足音は、きっとルイカ様たち。着いてこなくたって、あたし1人でお茶の子さいさいなんだけど。
「くそっ、ふざけんっ!?」
男が声を荒らげるのと、直後の衝撃音。誰かが犯人をやっつけたのか、はたまた喧嘩か……と思案に暮れるうちに、あっという間にその場に着いてしまう。
犯人をぶっ倒した青年は、艶かしい光を宿した深緑の瞳を、細めては此方に向ける。途端、信じられないと言ったようにギョッと眉を顰めた。
「アズマ?!アンタ、ルイカ姫の護衛してたんじゃないの?なァにこんなトコロでサボってんのよ!」
キーキーとおかまみたいに喚くスオウさん。肩には気絶した男を担ぎ、隣にはべっぴんさんを従えている。彼女はあたしとスオウさん、そして担がれた男を順に、心配そうに見つめる。これは……。
「わかるわ、スオウさん。アレよね、その子に一目惚れとかしちゃって、彼氏さんシメちゃったんでしょ?ちょっと意外だけど……恋なんてそんなものなのかもね。でも、矢張りやり過ぎじゃない?」
「ちっがうわよ!失礼ねっ!」
またまたムキー!とイキリ声を放つスオウさん。そっか、そういえば今日の祭の見廻りするとかなんとか聞いた気がしなくも、無いわ……まあ、なんでもいいけど。
私がしゃがみ込んで、先程スオウさんにぶっ飛ばされた男をつつく。完全にのされてるわ、ちょっと白目向いてるのがなんとも言えない情けなさを醸し出している。その様子を確認した後、あたしは辺りの財布を回収し始めた。べっぴんさんも後に続く。結構気の利く人かも。
「はい、これで全部かな……んじゃ、盗まれてた人はこっちに」
「やっと追いついたぞアズマ……!」
財布を1つ手にとってはひらひらと左右に振るあたしに、投げかけられる不満げな声が1つ。あら、と肩越しに首だけ振り向けば、丸眼鏡の向こうに不服気な瞳をチラつかせるヤマトの姿。
「意外と追いつくの早いわね」
取り敢えず褒めてみた。
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モモハ(プロフ) - そらもちさん» あざーっす!アッもしかしたら中だるみなんでもないッス!てへ!(棒) (2019年4月28日 11時) (レス) id: 98af2b3beb (このIDを非表示/違反報告)
そらもち - 面白いっすね!続編も読むぜよ(`・ω・´) (2019年4月28日 10時) (レス) id: 35f31302c7 (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - ひかげのこさん» ありがとうございます!めっちゃ張り切ります(*´ω`*) (2018年12月12日 17時) (レス) id: 0785378cec (このIDを非表示/違反報告)
ひかげのこ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!更新頑張って下さい! (2018年12月12日 15時) (レス) id: 256366ff3c (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - 866さん» がんばります!(テストヲヤッツケタラ() (2018年10月8日 18時) (レス) id: 937a2c5722 (このIDを非表示/違反報告)
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