俺は魔王で嫁が勇者で個性的な仲間に囲まれてもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】

165枚目 ページ32

｢野次馬はとっとと散りなさい！こっちは病人運んでるんだから、ほらもう邪魔よ！｣

｢あわわ、ど、ちょっと失礼しみゃっ、ふええ……｣

意識の飛んだ、項垂れているロンドを肩に抱えつつ。スオウは女口調のまま、漢気溢れる大声を放つ。取り敢えず近くの診療所まで運ぼうと裏路地から出たのだが、失敗だった。祭り真っ盛りの道中に美男美女の組、しかもその美男はまた美男を担いでいるというよくわからない状況にあるのだ。人目をひかない訳がない。

しかし、そんな中でも一際目立ったのは、近場からの悲鳴だった。

｢だっ、誰かー！！｣

甲高いその悲鳴の地点から、ソフィたちの方向へかけて人の波がゆらりと揺さぶられる。何者かが通り抜けるべく前進しているのだろう。スオウは綺麗な顔に不快の色を示すと、ロンドを抱えたままそちらへ進んでいく。診療所は違う方向なのに、とソフィも慌てふためき後をついて行く。

直後、飛び出してきた不審な男と、飛び出す位置を予測して待ち構えていたスオウは相対する形となる。スオウの絹のように滑らかな佇まいから発せられる、鋭く冷たい雰囲気に後ずさる男。そんな折、懐からぼろぼろと財布が地面へと姿を表してはこぼれ落ち、ますます男……盗っ人は青ざめた。反対に、周りが唖然とする様子を飄々と見回したスオウは、至って平静にうんと頷く。

｢とりあえず、アンタは逮捕だから｣

｢なっ、くそ、ふざけんっ！？｣

反抗する犯人を片手で持ち上げては地面にたたき落とし、寝っ転がった状態の彼を手早く縄でしばった。息の乱れの1つもなく、淡々と熟すその姿にソフィは感心する。

(なんだかんだ、強いひとだなあ……)

ロンドは未だ、起きないようだ。

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