161枚目 ページ28
「ふぇえええ!!もう、何処か行ってくださいー!!」
「逃げられたら同じこと繰り返されるでしょバカ!絶対捕まえるわよー!」
気品の欠片もまるで無く、ぎゃんぎゃんと喚きたてながら各々の武器を振り回すソフィとスオウ。一方防衛に徹する双子は、無言と無表情を保ったまま軽々と躱していく。彼女たちには呼吸の乱れもなく、余裕綽綽と言ったところだ。
ソフィたちの攻撃の隙を見計らい、タマとイナリは相手方の懐へと跳躍する。蹴られた地面は少しばかり抉れていた。
黒い羽織をひらりと往なして、イナリは首をゆっくりと傾ける。
「邪魔。」
そんな簡素な一言と同時に、放たれた強蹴。襲われたスオウは俊敏に反応し、刀の峰で咄嗟にガードする。イナリは峰に足をふわりと着地させれば、そのままの勢いで宙返り。元居た場所まで後退した。呆然とその様子を目で追っていたソフィに、図ったかのようにタマが接近した。
「きゃあっ!……あ」
反射的に棒をぶんぶんと振ったところ、タマの頬を掠める。ピタリと静止した白子の雪のような白肌からは、鮮血が滲んでいた。
「……血。」
「あわわわわ、しゅ、すいませぇぇん……!」
自分に襲ってきたのだから自業自得とも言えるのに、涙目で謝りだす始末。流石は我らがヒドイン枠、男心をくすぐる上目遣いも、上気させた頬も完璧だ。ぐっとくるものがある。
しかし、相手は女の子。あまり狼狽えることも無く、むしろ平静を貫いたそれはスッと目を細めた。
「リンゴ飴の棒……少し、舐めてた。ちゃんと、相手する。」
こくり、と真面目そうに頷く少女。月明りで白銀の髪がキラキラと輝く。構えを正し、やる気……正しい表記だと殺る気満々の彼女だったが、イナリが肩を突いたところでそれは解かれた。
「タマ。時間、無い。また今度。」
「……」
こく、と素直に同意すれば、ソフィたちに目もくれず一目散に撤退する。あちょっと!!とスオウが追いかける間もなく、姿は闇に溶け込んで消えてしまった。
「あー、もう。消化不良もいいところだわ!くやしー!」
キー、とハンカチを噛んで悔しがるスオウ。ソフィは素早くロンドの具合が悪化していないことを確認した後、彼に恐るおそる近づく。
「あっ、あのあのっ、先ほどはた、助かりました。……ありがとうございます!」
「ん?いやいいわよ気にしないで。結局アンタの彼氏ぶっ倒れちゃったままだケド」
「彼氏じゃないですっ!」
赤面しながら全力で首を左右に振るソフィだった。
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モモハ(プロフ) - そらもちさん» あざーっす!アッもしかしたら中だるみなんでもないッス!てへ!(棒) (2019年4月28日 11時) (レス) id: 98af2b3beb (このIDを非表示/違反報告)
そらもち - 面白いっすね!続編も読むぜよ(`・ω・´) (2019年4月28日 10時) (レス) id: 35f31302c7 (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - ひかげのこさん» ありがとうございます!めっちゃ張り切ります(*´ω`*) (2018年12月12日 17時) (レス) id: 0785378cec (このIDを非表示/違反報告)
ひかげのこ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!更新頑張って下さい! (2018年12月12日 15時) (レス) id: 256366ff3c (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - 866さん» がんばります!(テストヲヤッツケタラ() (2018年10月8日 18時) (レス) id: 937a2c5722 (このIDを非表示/違反報告)
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