73枚目 ページ31
「え、えっとぉ〜」
辺りには沈黙が広がり、フリーズする三人。赤黒い薬のボコボコと沸き立つ音だけが周囲に響く。冷や汗をかきつつ、ササキが発した音も直ぐに消えてしまった。彼女はハートのメガネを光らせると、大きく息を吸い込む。
「めんどくさいから、かけるよっ!」
「えっ、きゃあっ⁉」
「なっ、ちょっ!」
びしゃびしゃと執事とメイドに撒き散らされた液体。何故かシトラスの香りを漂わせる中、二人は目を閉じる。その隙に、部屋から出かけたササキが口を開いた。
「その薬はラブ・ポーション。通称惚れ薬!薬をかけられてから__あ」
アルフレッドとソフィは、顔をしかめながら、ゆっくりと目を開く。お互い目が合うと、見開いた状態で固まった。ササキが目を細め、続きを話す。
「薬をかけられてから最初に見た相手に惚れる、思春期にはうってつけの一品でーす。……えと、じゃ、じゃあねー」
ササキが急ぎ足で去ったあとも、二人は互いを見つめ合う。扉の勢いよく閉まる音で、ハッと肩を揺らした。さっきよりももっと、耳まで赤くなった二人。あわあわと口を開閉し始める。
「あの、ソフィ……さん」
「みっ、見ないでください……アルフ、さん」
顔を覆って恥じらう彼女に、胸を高鳴らせたアルフレッド。もしこれが少女漫画だったなら、十中八九背景に『かあぁ__』と『キュン』が書いてあるはずだ、うん。
しばらくもじもじする二人だが、急にソフィが上ずった声を上げた。細く小さな両手で、メイド服をキュッと掴んでいる。
「本当に、ごめんなさい!み、ミオの薬ってばいつも変なんだから……わっ私も、今ちょっとおおおかしいのでっ」
失礼しますっ、と扉へ向かうソフィの腕を、自然に引き止めたアルフレッド。金色の三つ編みと、銀色の髪が揺れる。ドン、と壁から小さな衝突音が鳴った。
「__あ、あ、アルフさんん?!」
「……すいません」
いわゆる壁ドン状態。パンク寸前のソフィの肩に、ヘロヘロとアルフレッドの額が落ちた。
「なんか、私もおかしいんです……あはは、お揃いですね」
顔を上げたアルフレッド。壁ドンの体勢は変わらず、ソフィは彼の瞳を、アルフレッドは口元に手の甲をつけ、違う方向に目線を送っている。めっさ甘い雰囲気の中。
「ごっめん作る薬間違えた!それただのシトラスの入浴ざ……あ、お邪魔だった?」
「み、ミオ〜!」
「ササキ。いくらなんでもやりすぎです‼」
その後、ササキの声が城内に響いたという__。
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866 - モモハさん» どーいたしまして!! (2018年7月15日 20時) (レス) id: 4d6199feac (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - 866さん» ありがとうございます!そう言っていただけるともう、あれです、昇天します()ありがとうございます! (2018年7月15日 16時) (レス) id: 7ea4a0fdca (このIDを非表示/違反報告)
866 - たまにメタなとこが出る、それがいい!! (2018年7月15日 7時) (レス) id: 4d6199feac (このIDを非表示/違反報告)
866 - 凄く面白いです!! (2018年7月15日 7時) (レス) id: 4d6199feac (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - リックンさん» そうなんですか、最近低浮上気味なんですが……これからも頑張ります(*´∀`*) (2018年6月27日 21時) (レス) id: c93a555509 (このIDを非表示/違反報告)
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