葉桜の幻想

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昔から失敗しては、よく叱られていた。
親から部活の顧問や先輩、チームメイト。
高校最後の大会で外したPK。
その時のことがトラウマになっていて未だにその夢を見て、魘されて飛び起きることがある。


そんな朝は、汗でびっしょりパジャマが濡れている。
失望した人間の顔、多数のそういった視線を浴びた経験からそうした軽蔑する視線に敏感になってしまった。


あ、この人今俺のこと馬鹿だと思ってるなぁとか。
出来ない奴だと思われてるなぁとか。


同じ失敗を繰り返したくないと強く思うのに。
繰り返してしまう。
大切な場面でミスをする。
しかも初歩的な、商談の時に見積書を忘れてくる、とかパソコンはあるのにUSBを忘れてくるとか、初歩すぎて失望されるのだ。



上司に何やってるんだ、詰めが甘いとか怒鳴られる。
自分が悪いから頭を下げることしかできない。
そんなミスさえ同期で既に主任になった大倉は飄々とカバーしてくる。
それが余計に大倉の株を上げる。


……ただの妬みだ。
大倉は1ミリも悪くないから、どうしようもない。
ほんといい奴なんだ。
だから、そんな大倉に嫉妬してしまう自分さえ嫌で
自分がどれほど劣るのかを突きつけられた気がして全てを投げ出したくなる。


放棄したくなる。
出来るやつには出来ない奴の気持ちなんてわかんねーんだ。絶対に。


自尊感情が低い。
高めたい、何度もそういった自己啓発本を読んだがダメだった。
共感をしても、高める言葉や習慣を真似することはできない。


俺は、めんどくさがり屋なのだ。



「……北山、お前先方にうちのパンフレットどう送った」
「宅配で送りました」
「伝票は何色だった？」
「……はい？え、とあ！赤です」
「……ばかもの！それは着払いだろ！お前な！先方からその事が理由で契約の断りの電話が入ったんだよ」
「え、あ、申し訳ございませんっっ、すぐ謝罪しに行きます！」
「お前はいい！大倉、来てくれ。今から時間大丈夫か？」
「はい」



営業所内に響く怒声。
決まりかけていた商談が破談になりそうになった。
それは俺がその会社へリース契約のパンフレットを着払いで送ってしまったからだった。


それが破談の本当の理由なのかは定かじゃないし、もっと安くリースができる会社が出てきたのかもしれない。



それにもし着払い伝票がほんとの原因だとしたら、客に払わせる気かと、プライドが高い経営者だったのだろう。


中小企業の経営者にありがちだ。


…そう、
……俺は悪くない。

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