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「幸せなままだよ。俺は、藤ヶ谷が大好きだし、藤ヶ谷も俺を大好きだ。」
「……っ、」
「それに、こっちの世界の俺の事を俺は知らねーけど、きっと藤ヶ谷の事を好きだと思う。だって俺だから」
「……それはねーよ。」
見詰めて伝えれば、やっぱり逸らされた。
今、僅かに柔らかくなった雰囲気をまとった藤ヶ谷の瞳の奥は優しい色が浮かんでいた。
やっぱり、こっちの世界の藤ヶ谷も優しいんだと思う。俺が浮気をしたらしいから、それで硬い殻で全身を覆ってるのかもしれない。
「今夜、ふじがやの部屋に行ってもいい?」
「……それは、」
「戻れる方法を一緒に探してよ」
藤ヶ谷の気持ちを考えれば、距離を置くべきかもしれないけど。
俺の細胞は藤ヶ谷に頼ることを止められない。
こっちの世界の藤ヶ谷と俺の世界の藤ヶ谷が違っても。俺にとっては、二人とも藤ヶ谷だ。
でも、やっぱり早く自分の世界の藤ヶ谷に逢いたいけど。
胸元でぐりぐりと額を押し付ければ、頭上からクスッと穏和な微苦笑が聴こえた。
その吐息はやっぱり藤ヶ谷だ。
「……ミツ。」
少し低めな声で、名を呼ばれ振り返る。
その声は横尾さんだった。自分の世界の横尾さんと何も変わらぬ美しくカッコイイ風貌に、嬉しくなる。覗く白い歯がやっぱり素敵だ。
「もうすぐ始まるから、準備しておいで」
やっぱりお母さんだ。
兄組の中でも、俺と藤ヶ谷の尖った雰囲気をよく緩和してくれる大切な人で今も、収録がある事を忘れかけていた俺に教えてくれた。
「もしミツの話が本当なら、収録が終わったら、スケジュールとかマネージャーさんに確認した方がいいと思う。」
沈着冷静な横尾さん。
その独特な雰囲気に、俺も冷静さを取り戻していく。
「そうだね。ありがとう。取り敢えずメイク室行ってくるわ!」
早めに楽屋入りはしたが、俺と藤ヶ谷以外は、準備が終わってるようだった。玉ちゃん、衣装汚してたらごめん、と玉ちゃんの方を見ると玉ちゃんはクスッと笑って「大丈夫だよ」と声を出さずに答えてくれた。
「藤ヶ谷も一緒に行こうぜ。」
「…え、あ、おう」
戸惑う藤ヶ谷の腕に抱きついて、頬を擦り付ける。つけてる香水も同じで、不安な気持ちを緩和させてくれる。現実逃避をしたくなるが、
「……北山お願いだから、触れないで欲しい。」
こっちの世界の藤ヶ谷に、俺は嫌われてる。
俺がもしマジで浮気をしたのなら、当たり前なことだけど。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時