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二人並んで同じベッドで朝を迎えた。
目が覚めて、戻っていればと期待をこめつつ何ともスッキリしない複雑な想いを含みながら、横を確認する。そこには、ひじ枕をしながら、優しい瞳でこっちを見詰めている藤ヶ谷が居た。もう、起きていたんだ。
どっちの藤ヶ谷だろう。
戻れたのか、戻れていないのか。
この姿では、分からなくて、無言でじっと見詰めてしまう。
「……きたやま、?」
藤ヶ谷も疑心暗鬼なのだろう。
互いが探り探りだということは、戻っていないのか。今日も藤ヶ谷の世界のままなのか。
「……うん、ふじがやを愛してる北山だよ」
そう告げれば、ぱあっと表情は明るくなる。
どっちだろう。
「よかった、まだ戻ってないんだね」
その一言で、別れた藤ヶ谷の世界なのだと知る。
眠ったら、戻ってるのではとどこかで思っていた。
しかし、戻っていない。
蕩けるような藤ヶ谷の表情は、元の世界の藤ヶ谷と変わらない。
昨日の冷笑する藤ヶ谷とは別人のようだった。
「うん。おはよ」
「おはよう」
「……っん、…はぁ、」
甘い甘い口付けが降ってくる。
柔らかい唇が、降ってくる。
そして、真っ赤な舌が、絡みついてくる。
こっちの俺、ごめん。
最後まではしてないけど、
やっぱり藤ヶ谷を拒むことはどうしてもできなかった。
でもさ、何で。
こっちの俺は、藤ヶ谷じゃない他の人に惹かれてしまったんだろう。
どうしても、それだけは理解ができなかった。
「……ふっ、」
「…はぁ、…あ!北山の口での奉仕の仕方一緒だったよ」
「…………微妙な心境だわ。」
藤ヶ谷は、俺を混在してるのだろうか。
罪悪感は微かに増していく。
*
藤ヶ谷はタクシーを呼んで帰っていった。
徒歩で帰れる距離で住んでいたのに、こっちの世界では徒歩で帰るには時間がかかってしまうらしい。
繋がらない自分のスマホ。
藤ヶ谷へのメッセージは既読にはならないし、
誰からも連絡は入らなかった。
電波は立ってるんだけどなあ。
俺は昼からの仕事だから
ちょっと、考えることにした。
ソファに尻を沈める。
横尾さんからの忠告、藤ヶ谷からの話、メンバーの反応ー…
こっちの世界と俺の世界の違いは、
藤ヶ谷と俺の関係性だけ、なのか?
なぜ入れ替わってしまったのか。
「……あ、」
一縷の望みにかけ、重い腰を上げて、書斎へと向かった。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時