迷走＊ワールド

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「いやいやいや！浮気なんかする訳ねーじゃん！お前一筋なのに……！」
「はっ、どの口が言って」
「藤ヶ谷検定があったら首席で合格だし、藤ヶ谷しか目に入らないのに浮気なんてするわけねーだろ。」
「……っ、北山、絶対、頭ぶつけただろ」



嫌がられても、ぎゅっと腕に絡みつく。
もうマネージャーなんてどうでもいい。
剥がされても、まとわりついた。何？！ドッキリ？！
でもカメラはない筈だ。あったとしたら、付き合ってることすらを藤ヶ谷は口にしないだろう。




「ぶつけてねえよ！それは、藤ヶ谷だろ？！」
「意味わからないし。」



ぐいっ、と押され、むにっと頬が潰される。



「ふじがや、好きだよ。今日、部屋行ってもいい？」



なぜ、拒まれるかは分からないが、引き下がる訳にはいかない。別れてもないし、浮気もしていない。
身体だって、ちゃんと一週間前に重ねたし、中に藤ヶ谷を受け入れた。腹の中が、藤ヶ谷で満たされて、抱き締めた腕の感触は今でもすぐに思い出せる。



藤ヶ谷が言っている3年前に別れた記憶なんてねーし、もし別れていたなら、きっと感触を鮮明に思い出せないだろう。



「……とにかく無理。稽古で遅いし」
「部屋で先に待ってるから。」
「俺んちの鍵持ってねーだろ。」
「持ってるよ！ほらっ！」



鞄から、チリンっとロゴが目立つキーケースを取り出す。
小さめなカードキーがキーケースからはみ出して繋がられているのをぐっと近づけ見せつけた。



「……それ、前のマンションのカードキーじゃん。って返して貰った筈なんだけど。なんで持ってんの？」



これでもかってくらいに眉根を寄せ、パーツを中心に寄せてる藤ヶ谷。それは困惑した時の仕草だった。



なんで、ってふじがやがくれたんだろっー！
もう訳が分からない。だから、一週間前に使ったし、返してないし。
この哀しくも報われぬよく分からない時間に混乱して、身体を丸め、腿の僅かな隙間に顔を沈めた。




「ちょ、北山？！」
「……返してねぇもん。」



いつまで、破局ごっこを続けるのだろう。
浮気したとか、別れたとか、ラブラブな俺らには無縁のNGワードだろっ。



「……ぐすっ、」



いけねー。
鼻水が出てきたぜ。
早くいつもの藤ヶ谷に戻ってほしい。



「昨日も来ないし、LINEも未読スルーするし、俺何かした…？」
「……未読スルー？」
「したなら、謝るから。いつもの藤ヶ谷に戻って」



目を見開く藤ヶ谷には気付かずに、ずるっと鼻を啜った。

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