今夜君が欲しい【中編】

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宮田の部屋で眠ってしまっていたらしい。
結構な勢いで叩き起された。
『ガヤさんが心配するよ』って。


その名を聞いて、やっと虚ろだった思考が回り出した気がした。
それでも眠たいのに叩き起されたからかボーッとする頭の中。



ソファで寝ちゃったみたいで、起き上がる時も身体が思うように動かず、宮田が身体を起こすのを手伝ってくれた。



頭は起きてるのに身体は動かない、金縛りってこんな感じなのかなとぼやっと思った程に怠かった。




「玉さん、急に寝ちゃうからびっくりしたわ〜。はーい。お水」
「ん、サンキュ、宮田」


宮田から、透明な水が入ったグラスを受け取ると、喉に流し込む。すーと喉を通して胃に広がる冷たさが、身体を何とか震わせた。



水滴を残したまま飲み切ったグラスを宮田に差し出した後、立ち上がると、くらりと眩暈がした。



「危ないっ」



宮田の手が伸びてきて、そのふらつく身体を抱き留めた。
ガヤとは違う、ガヤより少しだけ太い男らしい腕が支えてくれたおかげで、倒れずに済んだ。



「ありがと…」



何なんだ、俺ってこんなに寝起き悪かったっけ？



「心配だから、送ってく」



本当に心配そうに覗き込んでくる宮田の顔。
いつもニヤけてる顔が、真剣な顔をしてるから、思わず吹き出してしまう。




「宮田のその顔、ウケんだけど」
「うわっマジひでぇ！」



吹き出すと、宮田も吊られて笑う。
宮田はその顔がいいよ。奥歯まで見せて笑うオマエの笑顔が俺は好きだった。



ガヤとは違う雰囲気を持った癒しの雰囲気(オーラ)。宮田独特の柔らかいもの。



ひでぇひでぇ言いながら、厚手のパーカーを羽織る宮田。歩ける距離だから。別にいいのに、




「ほらっ、ガヤさん心配してるでしょ？」
「……あっ」



改めて言われて、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、メールが着ていた。
そのメールを人差し指でタップする。



『タマ、ごはん食べて帰るわ』
『タマはもう家に帰ってる？』
『タマー？』



何通か連続で入っていた。



そして、最後には『俺もう帰るわ。タマ、大丈夫か？』そう着ていた。



そして、たった今届いたもの。



『ウチ戻ってきた。タマはどこにいるの？』



愛しいその言葉。
たまらず、電話をかけていた。



『もしもし』


不機嫌そうに1コールも鳴らさず出たガヤ。



「ごめん、今から帰るわ」
『待ってる。気をつけてね』



その行動に偶然にも愛を確かめられた気がした。

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