今夜君が欲しい【中編】

84 K ページ34

やらかしたなーと思いながらも、乱すこと無くオッサンの胸筋に抱きつく。
俺は、別れさせ屋だ。
別れ方については、プロだ。
彼の事はもうコントロール出来る様になっていた。



「嬉しい…」



そう胸筋に額をつけていた顔を上げると、意識的にうるませた瞳でオッサンを見つめた。



「…沢山、考えてた。部長と住めたらどんな場所でも。例え…一間のアパートでも幸せだって」
「北山君っ…！」



頬に手を添えてきて、親指で俺の頬を厭らしく撫でるオッサン。その瞳は、「感激」していた。



ぎゅっと抱き込まれる。



「でも、ね。それは描いた夢でしかない。会社の人に聞いたんだ。部長、可愛い大学生の娘さんも居るんでしょ？」
「………ああ」
「綺麗な奥さんも居る。毎年記念日には、海外に家族を連れてってるって聞いた」
「………、」
「そんな家族を僕は壊せないよ。大好きな部長の未来を壊したくない。」
「………北山君、」
「それが、僕の部長への愛。分かってくれる？」



そう言って、オッサンの首に腕を回しそのままぐっと引き寄せ唇を奪った。



「娘」
これは卑怯だと自分でも分かってる。
可愛い自分の子を出されたら、何も言えないのが父親だ。このオッサンは愛妻家だとの噂も一部あるのを聞いた。様々な噂がある。
そんな愛妻家を落とす北山は何者だ、とも。



俺に虜になるのは、アンタじゃねえんだよ。
オッサン。



「…北山君は、本当に私の事を、」



嬉しそうに、でも悲しそうに笑うオッサン。この人はいい人だった。だから…



「もう終わりにしましょう？部長、最後に沢山愛してあげる」



じゃあな。
藤ヶ谷を嫉妬で燃え上がらせるいい駒だったよ。
その御礼はしてやるよ。俺の全部を使って。



「…ごめんな。北山君っ、愛してる」



部長の上に覆いかぶさった。
バスローブを捲り、部長のモノを手を使わず咥えてやる。すぐに、勃ち上がるソレ。
手を使わず思い切り喉の奥まで咥え込み、喉奥でトントンと扱き、きゅうと締め付ける。




「……っ、はぁ......気持ちいいよ、最高の眺めだ」



「んふふ」



上目遣いも、忘れずに。



「このぷにぷにした愛しい頬が窪む所、最高だ」



どーも。
うっとりと見下ろしてくるオッサン
本当にオッサンの瞳は濡れていた。



でも、俺の口角は自然と上がる。
背中越しに、ジャケットに入れていたスマホのバイブが鳴っていたのが分かったから



ジャケットに入ってるスマホは藤ヶ谷しか知らない番号だった。

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