今夜君が欲しい【中編】

80 F ページ30

朝目が覚めても…タマは隣に居なかった。
ジャージで出ていったタマ。
でも、起き上がって…クローゼットを確認すれば、スーツが一着なくなっていた。


俺が眠ってしまっていただけで、タマは帰ってきていたんだと言う事がわかった。


リビングに行っても、タマは居なくて。
玄関の靴は、革靴がなくなっていた。



先に出社したんだろう。
いつも一緒にとっていた朝食が今朝はない事に少し胸が痛んだ。自業自得なのに。



それにしても、物音にも起きなかったなんて。
北山を想いながら昨夜に自慰行為をしてからそのまま寝落ちしてしまったみたいだ。



それは自分が想ってた以上に深い眠りだったらしく、時計を見て慌ててシャワーを浴び、朝食はとらず出社した。デスクで菓子パンでも頬張ろうと。



タマと会うのが気まずい。
もう、ダメかもしれない。



タマは昨夜どこにいっていたんだろう。



宮田の所、だろうか？



出社すると、タマはもう出社していた。
そればかりか、北山も出社していて、何やら慌ただしく台本を確認していた。何人かで。




「おはようございます」



いつも通り挨拶をすれば、振り返り返してくれる人、全く返さない人、振り返らず返してくれる人、これもいつも通り十人十色なものだ。



その慌ただしい集まりは何があったのか確認しにその輪の中に入り込んだ。
後輩に尋ねると、生放送でゲストに来る筈だった人が、昨晩未明に感染症を発症してしまい、緊急で病院へと運ばれたの事だった。


制作会社の人も交えて、台本の変更にあたる。
そのゲストは主要な位置での出演だったため、大幅な変更が必要となるらしい。



ハプニングに強いはずのチームも、年度に伴い新編成に慣れておらずバタバタしていた。



そんな中で誰よりも冷静だったのは、北山だった。北山は、台本の手直しの手伝いをディレクターの元で指示を受け、やっていた。



その機敏な動きに、周りも感化され冷静さを取り戻し出す。


ディレクターは引き続き、手直しをしていくと言うことで、一旦、北山さんはアイドルの大倉さんへと楽屋に行き渡すように命じられていた。



人手が足りない状況で、何役も買ってでなければならない。



自分も例外ではなく、制作会社の方の指示の元…他のゲストの方への対応に入った。




＊




昼頃、生放送は終わり…
関わった人達が、安堵と労いをこめスタジオに集まるようにと指示があり向かった。

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