今夜君が欲しい【中編】

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部屋に入ると寝室までガヤの腕を再び引きベッドの上へと押し倒した。


電気もつけず、出窓から差し込む月明かりのみが見下ろすガヤの表情を照らす。



幾度も、押し倒してきたベッドの上なのに。
ガヤが不安そうな表情(かお)をしている事が、何故なのか…勘ぐってしまう。


『帰宅しようとしなかった事』『北山さんを一日中目で追っていた事』。北山さんは『部長が好きだ』と言っていた。
でも、ガヤは？



昨夜、愛を確かめる事が出来なかったから余計に不安なのかもしれない。


ヒトは心が見えない
イヌみたいに、嬉しい時は尻尾を振ったりして心が目に見えれば、どんなに楽なんだと思う。



それが、ヒトにとっては、言葉だったり、表情だったりするのだろう。
でも、厄介なのは。それは偽る事が出来ると言う事だ。



嘘をつくことができる。
でも、その嘘はずっとは取り繕えない
どこかで綻びができる。



「たま…？どうしたの？怖い顔して」



俺を見上げるガヤの顔は、情けない程…
動揺していた。濃い茶色の瞳が揺れていた。



暗闇で、少しだけ瞳が大きく見える。



ガヤは自分の頬の横にある俺の腕を弱く握りしめた。シーツに押し付けてる手のひらが滑りそうになるほど汗ばむ。



「ガヤ、愛してる」



馬鹿の一つ覚えのように、最近はこの言葉を伝えてる気がする。


不安なんだと思う。


不安を感じていなかった日々は、当たり前過ぎてその『愛してる』という愛情表現の言葉は自然と出てこなかった。




「…俺もだよ」



ガヤはそう言って、俺の腕から手を離し
首に両腕を回した。


ぐっと引き寄せられる。



「…昨夜はごめんな。シよ？」



誘うように、後頭部を引き寄せられると
ガヤの柔らかい唇に俺のそれが塞がれた。
ガヤの甘い香り。


何度堪能しても足りない程の媚薬みたいな香り。



何度も、何度も角度を変えて、貪るように互いに唇を求める。その隙間に深く入り込み、舌先を絡め合う。



「…っ、ガヤ.....」



ガヤの咥内は珍しく苦いタバコの味がした気がした。



「たまっ……っ、」



俺の名を呼ぶガヤの声も好きだった。
余裕そうな彼が乱れていく合図のように。
決して、我は忘れない程の…淫れ。



そのまま、ジャケットの下のシャツを左手で捲り上げる。



ガヤの可愛い小さな胸の先端を指先で押し潰したり、捏ねる。まだツンっと立ち上がっていないそれは少しずつ固くなっていく。



「…あっ…ん、」



もっと乱れて。

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