今夜君が欲しい【中編】

68 K ページ18

貪られるようなキス。
唇と唇の間にまるで隙間もなく、息も鼻からしかできないほど、深く強く塞がれる。


何度も角度を変え唇のみを堪能するかのように吸い付かれた後、隙間から生温い柔らかい舌が口内を動き回る。


「んっ！……んんんっ」


口を塞がれてるのに、鼻から抜けるような甘ったるい声が溢(こぼ)れてしまう。



「…どう、自分の味は？」



やっと口から空気を吸うことが出来たと思うと、妖艶に囁く声が耳に入る。
唇まで数センチの距離。
近すぎて、藤ヶ谷の表情がボヤけてよく見えない。
そんな距離感。



…自分の味、


確かに、俺のをしゃぶった後の、キス。
前髪でよく瞳の奥が見えない。
それでも、チラリと覗く瞳はギラリと輝いて見えた。



「…ん、なの…、」
「甘いの好きだろ？」
「甘くねえ！…、っ。それに甘いのは嫌いだ」



誰の事を言ってるの？
誰が、甘いモノを好きなの？
玉森？



苦くて仕方ない筈の、その濃厚なキスは確かに甘く痺れるような感覚だった。
苦い筈のそれは、藤ヶ谷の口内ですり替えられたかのように。



「……んんんっ、…あっ…！」



藤ヶ谷はその言葉に何も返さず、また口を塞いだ。
激しいキスの息苦しさに、窒息しそうになる。
頭の先から足の先まで、身体中が痺れていく。



(コイツ、キス上手すぎる…！)



数えきれない人とキスをしてきた。
自分から、相手から、求めるように、求められるように。



その今までの数えきれない程のキスとは比べモノにならない程の、甘く…痺れて


中 毒性のあるキスだった。



キスをするだけで、また下半身の中心に熱が集まり芯が主張しそうになるのを感じた。
藤ヶ谷の下半身も反応してる。



腹を押し上げてくる。
でも、藤ヶ谷は押し付けたり擦り付けたりはしてこなかった。



今までの奴は、自分の欲を解放したくて腰を押し付け振って欲を出させてと乞ってきたのに



声なんて、出したくない。
俺はプロだ。感じるフリをしてるだけ、だ。



「……、北山の唇、気持ちいい…」



ざらつく舌が離れた。
舌先同士が絡んでいたものが離れ、また降ってきた甘い言葉。



脳天がぐわんぐわんと揺れる。



「…キスで満足なのかよ？」



それを何とか誤魔化しながら、挑発した。
藤ヶ谷の瞳の奥を見据えて。



その押し上げてくるモノをまた布越しに触る。
布越しでも分かる。
その先端が…濡れていることに。



「…俺は、いいよ。北山を気持ちよくさせたい」



吐息は甘い。

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