今夜君が欲しい【中編】

65 K ページ15

「…これ何？」
「………」
「被れなんかじゃないよね？」
「……藤ヶ谷には関係ねえだろ」
「……北山、本当は恋人が居たのか？」
「…………」
「それとも、部長？」
「……だから、関係ねえだろ？」



数センチの距離で、触れそうな距離で詰め寄ってくる藤ヶ谷。
アンタ、今自分が何を言ってるかわかってる？



『自分は嫉妬してます』と同じ事言ってんだよ。



「関係ねえって言うなら、消毒してなんて言うんじゃねえよ」



あ、って思った瞬間にはもう藤ヶ谷の表情は見えなかった。代わりに藤ヶ谷の髪が俺の頬から顎のラインを燻った。



そして、その唇はまるで上書きをするように、その『嘘』へと吸い付いた。


ただの後輩に、こんな事はしないだろ？



「…んっ、」


吸われてる箇所が熱い。
藤ヶ谷の舌で唇で腫れ上がるんじゃねえかってぐらいに吸い尽くされる。



「…部長と折角離したのに、」
「……え？」
「自分から部長を求めたのか…？それとも今回も無理矢理だったのか？」



折角離した？藤ヶ谷の言ってる意味が分からなかった。ただ藤ヶ谷の冷たい声でその質問が矢継ぎ早に降ってきた、耳元で。



「教えてやろうか？」



アンタが先に俺を置いていったんだろ。
ヤレナイと分かれば、連絡がない恋人の元へ翻ったのはアンタだ。



俺に惹かれてるくせに、恋人を欲しがるアンタが悪い。逆に藤ヶ谷の胸ぐらを掴み、背伸びをすると藤ヶ谷の耳元で囁いてやった。
その吐息に、藤ヶ谷の身体がビクついた。



「合意の上だよ」



その綺麗な形の耳
星のように輝くピアスにそっと口元を寄せて。
唇の先が少し触れる程の距離で。



なあ、気づいてる？
たったこれだけで、アンタの下半身が反応していること
布越しに俺の腹を押し上げてること。



「藤ヶ谷にだって恋人がいるんだろ？俺が部長とセックスしたってアンタは俺に何を言う資格もない。」
「………」
「例え、俺がアンタの事を好きだとしても。俺はアンタのモノにはならない。」
「…………っ、」




その膨らみに布の上から、手のひらで触れて包み込むように撫でる。



「…アンタが恋人と別れない限り、俺はアンタとはセックスはしない」
「………俺の事が好きなの、か？」
「……さあな。でも、俺は好きな奴には俺の事しか見て欲しくねえから。俺だけが相手を想ってるなんて耐えられない。」
「……」
「好きな奴とは、恋人になるまで身体はやらない」



指先で挟んだ後、弾けば…完勃ちになった。

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