今夜君が欲しい【前編】

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「…久しぶりの依頼か。」


主業 : 在宅WEBデザイナー
副業 : 別れさせ屋


その二つが自分の稼ぎの支柱だった。


在宅ワークに関しては、有難いことに前職からのツテを使ったりして順調に依頼が増えていて充分すぎる程、上手く回っている。


でも、自宅に籠ってばかりではつまらないからと、もうひとつ副業を始めた。


そのきっかけは、ツレに頼まれて、あるひと組のカップルを別れさせたことから始まった。


あー、簡単にカップルって別れるんだ、と嘲笑った。手にした快感は尾を引き、今や職業として、報酬を貰いカップルクラッシャーをしていた。



リスクも高い。
だから、こっちの方は完全紹介制。


紹介元の名前まで確認するシステムをとっている。
過去の依頼主にも公表しているのは、メアドだけ。



打ち合わせは、専ら大衆の喫茶店だ。



着手金(50万円)

成功報酬(300万円)


絶対失敗しないから、期間内に別れさせられなければ、着手金は全額返す仕組みをとっている。


成功報酬が高いのは、経費やなにやらで、かかるものはこっち持ちだからだ。


安い金額を提示し、依頼が増えても厄介だし。
スマートに契約履行をしたい。
だから、高い金額を提示していた。



火のついた煙草を口に咥え、煙を吐きながら、パソコンのディスプレイを見る。



「…宮田 俊哉」



紹介者の名前には、一年前に依頼があったテレビ局の役員が書いてあった。



このテレビ局役員は、不倫相手と一緒になりたいから奥さんと別れたいと言って依頼にきた。


奥さんに近づいた俺は、簡単に奥さんを落とした。
そこをその役員に目撃させ、見事破局。役員からすれば、円満離婚だ。


その奥さんとそれから約三ヶ月交際を続けるフリをして、上手に別れた。
奥さんも納得してくれた。



別れさせ屋は、自分と標的(ターゲット)の別れまで上手に演出できなければ名乗る資格はない。夢物語みたいに思えるかもしれないが、"円満に"が自分の中のモットーであり、ポリシーだった。




このメールが半年ぶりの依頼。



テレビ局役員に、メールで確認すると、数十分後返ってきた。
そこには、『宮田を紹介した』ときちんと記されていた。



機密事項を外部に漏らしたら、彼にも社会的責任が問われるように誓約済みだった。
メールが返ってきて、この宮田は『安全な依頼者』へとメッセージボックスの中で仕分けた。

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