恋は何歳まで出来ますか？

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裕太が生まれた時に「やっと逢えたね」って思った。痛くて、意識は飛びそうで疲れ果ててたけど、心からそう思った。


そして、藤ヶ谷くんの言葉でやられた。


「裕太…」
「……え？」
「名前は裕太にしよう"裕福に太く生きてほしい"って思いを込めて」
「…ゆうた」
「オレまだ学生だし、今はひろに迷惑かけると思う。でも、絶対苦労させないから。」



そう言った藤ヶ谷くんの強い瞳は一生忘れない。
藤ヶ谷くんはその後、鍵を差し出してくれた。
新しいアパートの鍵。


後からお義母さんにこっそり聞いたこと。
藤ヶ谷くんは平日の夜、学校を終えると、工事現場で働いていたらしいということ。
泥だらけの靴や自分で回す洗濯を見てお義母さんは途中から気付いたらしいけど、息子の覚悟を見たお義母さんは何も言わなかったんだって。



「愛されてるよ、とっても。ひろちゃんは」



そんなお義母さんに愛されたから、こんなに素敵な藤ヶ谷くんが育ったんだって思った。
藤ヶ谷くんが隠してるのならば、私は知らないふりをする。


藤ヶ谷くんが…
たいちゃんが見つけてくれた1LDKのアパートはとても広いとは言えないけど、私の大切な場所となった。



私が藤ヶ谷くんと住むアパートに戻ってからは
藤ヶ谷くんはずっと夜いてくれたから、深夜のバイトは辞めたんだと思った。
でも、違ったんだね。


裕太の夜泣きも治まり始めた時期から、
私たちが寝静まったのを確認して、工事現場に行ってくれてたんだね。


玄関の少ないけど散らばっていた泥と、隠してある作業着をある日見つけてしまったのだ。
コインランドリーのレシートもその作業着と一緒に入っていた。



苦労はさせない、
その言葉は嬉しいけど、間違ってる。



私は藤ヶ谷くんと一緒にいられれば
喜んで苦労したいよ。



藤ヶ谷くんの身体が一番だよ。


だから…


無理しないで。



「たいちゃん、これからさ…毎日たいちゃんと手を繋いで寝たいな…」
「え？」
「ダメ…？だって、たいちゃん昼間は大学にバイト、裕太で忙しいから。私が独り占めできるの夜だけなんだもん！」
「……ひろ、」
「夜のたいちゃんは私だけ見てて？」



夜、あなたが出ていかぬようにぎゅっと、手を握りしめた。



たいちゃん、ありがとう。
家族のことを考えてくれて、ありがとう。


私だって考えてるよ？
たいちゃんが思ってる以上に私の執念すごいんだから。
引くかなって思ってたいちゃんには見せてない貯金通帳がまだあるんだよ。

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