恋は何歳まで出来ますか？

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リビングへと行くと、母さんがいつものようにキッチンに立っていて、宮田は母さんがいれた珈琲を飲んでいた。コーヒーカップを掴む指先を見つめては、昨夜を思い出して勝手に恥ずかしくなる。



「おはよっ、宮田…」
「おはよう、裕太くん」



今朝は出勤せず、待っていてくれた。
タブレットに目を通し、経済の記事を読んでる宮田の横に座る。


自然に破顔して…宮田に寄り添い見つめる裕太を見て、宏光は衝撃を受けていた。
昨夜、何かあったのでは、と思えてしまうほど。
裕太から発せられる空気が甘すぎだ。



(それに…！裕太、私に挨拶してないっ)



いつもは、宏光へ真っ先に「おはよう」と挨拶をして、後ろから抱きしめる裕太だったが、今日はもう視界に宮田しか入っていないのでは、と思うほどに裕太は宏光には眼中に無いように感じてしまった。



年の差、子離れ、同性同士…
親友の元夫。
様々なことを考えれば応援など出来るはずもないのに。



こんなにも幸せそうに宮田を見つめる裕太を見てしまうと、そんなのは何も問題なんかじゃないと思えてしまうから、不思議だ。
でも、でも、と否定したい気持ちをぶつけることは出来ず、宏光は卵焼きを焦がしてしまった。



その焦げた匂いに気づいたのは、
裕太や宮田ではなく、起き抜けの太輔だった。



手を伸ばし宏光の前にあるコンロのスイッチを回して消した。宏光はその腕でやっと気づき、振り返ると、太輔が苦笑いしていた。白い並びがいい歯を覗かせて。



「……宮たち、なんかあれだよね…甘いね…昨日なにか」
「みなまで言わないでっ！」



あったのかな、と藤ヶ谷が言おうとしたのを、宏光が表情を蒼くして止める。
マザコン、マザコンと高校生の時、裕太をからかっていたけど、充分、宏光も子離れできていなかった。



今にも泣きそうな顔面蒼白な宏光のおでこに、藤ヶ谷はそっとキスをした。



「今日は弁当いいよ？」



まっ黒焦げな卵焼きに、洗い途中のようにボールに入れられてるままのレタス。
まだレンジに入れられていない袋に入ってるほうれん草たちを見て、藤ヶ谷はそれを冷蔵庫にしまった。



「たいちゃんっ…！」



今にも泣きそうな宏光の髪を撫でると、代わりに藤ヶ谷は出勤前にも関わらずキッチンへと立った。



「…許す。寝ておいで？」
「…恩に着ますっ」



宏光は、藤ヶ谷を置いて走り出した。
寝室へと。


そんな二人には気付かず、裕太は朝から宮田の横顔を愛しそうに見つめていた。

後悔先に立たずの昼→←.＊(MT)

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