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『Aがまだ赤ん坊の頃父親を亡くし、母親と二人で暮らしていたの。それが小学四年生の時、突然母親の男と三人で暮らす事になった。生活が一変したでしょうね。母親の愛が男にだけ注がれるようになっていくんだから。』
目を閉じて息を吐くと、ソファーに寄りかかった。
『日を追うごとに離れていく母親の心を、何とか繋ぎ止めようと気を引く事が裏目にでる…。学校にも行けない日が多くなって…先生や行政が家庭訪問しても会わせてもらえない。そして孤立した世界で最悪の状況に陥ってしまった…。』
登坂を見つめる目が赤い。
眼鏡の縁を少し上げると涙を拭った。
『…母親の男に…性的虐待を受けていたんです…。』
想像を越えた事実に敢然とする。
『母親に見捨てられ、日常に繰り返される暴力にあの子はひとりで必死に耐えていた。…そして最悪の結末を迎えたわ。男の寝タバコから引火して家が全焼したの。…男は重症、母親は助かったけれど、二度とAの前に姿を見せる事はなかった…。』
目頭を押さえて下を向きため息をもらす。
『Aは何も覚えていない。毎日母親の迎えを待っていたあの子に…現実を突きつけるのが辛い。』
開いている窓の隙間から、生暖かい風が吹き白髪を揺らしている。
伏せてられていた切れ長の瞳が、力強く吉田をとらえた。
『俺がいます。』
『…登坂さん。』
『真実を知ってどん底に落ちたとしても、必ず連れ戻してみせますから。』
長い間登坂の顔を見つめていた吉田が目を細めた。
『…Aには心強いナイトがいるのね…。』
『残念ながら、本物のナイトは別にいますけどね。』
クッと笑った登坂につられて吉田の表情も柔らかくなっていく。
『それは残念ね…。あなたならAを幸せに出来るって感じたのよ、直感だけど。』
『…俺じゃ…何も与えられない。』
『え？』
『…いえ、何でもありません。』
目を細めて微笑んだ登坂を見て、やっと吉田に笑顔が戻った。
『どうか…Aをお願いします。』
シワが目立つ指先が最後の涙を拭う。
『……登坂さん…あなた、とても優しい…いい目をしているわ。』
春の風が吹き抜ける部屋。
はっとした表情の登坂を優しい笑顔が包み込んだ。
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もちたゆ(プロフ) - アン様ご無沙汰しております(*^^*)続編の方なのですが書き留めていたかなりのページ数が消えてしまい意気消沈しておりました…。励みになるお言葉ありがとうございます(*^^*)頑張ろう…またのぞいてみて下さい！ (2018年10月1日 21時) (
レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
アン(プロフ) - 久々来ちゃった( *´艸｀)やっぱ、吸血鬼さん大好きやわ〜〜♪( ´▽｀) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 64b2d92415 (このIDを非表示/違反報告)
もちたゆ(プロフ) - ひろ様、コメントありがとうございます(*^^*)なかなか物語を進められず申し訳ございませんm(__)m必ず完結させますので、どうか最後までお付き合い下さい(*´ω｀*)とても励みになりました。ありがとうございます！ (2017年5月16日 22時) (レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - こんばんは、はじめまして。続きが気になって一気に読みたいのですがそうもいかず、ヒマを見つけては読ませて頂いてます。挨拶は最新ページまで読んでからと思っていたのですが、もう少し時間がかかりそうなので...どうなるの？吸血鬼の正体を想像しながら読んでます。 (2017年5月16日 20時) (レス) id: cbdd06dc5c (このIDを非表示/違反報告)
もちたゆ(プロフ) - 聖也様、コメントありがとうございます(*^^*)容姿完璧な主人公に対抗するには、内面の美しい良い子でなければいけないと思いました〜。でも少し可哀想だったでしょうか…( ´-｀)是非最後までご覧になってみて下さい。よろしくお願い致します(*^^*) (2017年5月5日 22時) (レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちたゆ | 作成日時：2017年3月9日 18時
