▽ ページ13
．
『…もう、臣さんに心配ばかりかけてる自分じゃ嫌なの』
吸い込まれそうな深い瞳に、情けないあたしが映る。
臣『……心配ぐらいさせろ』
額から流れる汗が、急いでここへ来た事を伺わせる。
いつも冷静沈着な臣さんなのに…。
あたしの様子が違う事に気づいてたんだ。
…胸がきゅっと締め付けられる感覚が…歯痒くて悲しい。
剛典を好きな気持ちは嘘じゃない。
今もあの笑顔に会いたくて仕方ないから…。
……。
だけど、この人は特別なんだ。
臣さんの代わりはいない。
明日も見えなかったあたしを、明るい場所へ引き上げてくれた。
縁もゆかりもない世間知らずのあたしに、世の中を教えてくれたのも臣さんだ。
こんなに情が深い人を、あたしは他に知らない。
臣『一人立ちは…まだ早いだろ…』
寂しそうに微笑む臣さんを、無意識に抱きしめてしまう。
胸の鼓動が聞こえて…頬が熱くなる。
臣『……A』
もう…いいや。
こんな凄い男に、こんなに大切にされてるんだから…。
それだけで充分だと…思うことにする。
『…家族でも、妹でも、弟子としてでもいい…素の自分でいられるの、臣さんの前だけなんだもん…』
…こんな恥ずかしい事も、素直に言えよ…臣さんになら。
臣『…俺に出来る事は何でもしてやる。だから、心配かけるとか考えるのはやめろ』
『…うん』
臣『…お前がどんなわがまま言ったって、俺は変わらない』
『……う…ん』
臣『…必ず…俺が護ってやる…』
………。
……やっぱり、ちょっとムカつくんだけど…。
『ねえ臣さん。それ、他の女だったら絶対勘違いするよ』
臣『ねえよ』
『いや、あるから』
臣『俺はAにしか言わねえし』
……。
……もう…。
臣『それから次の仕事、絶対無理すんなよ』
クッと口角を上げて微笑む、臣さんの笑顔…。
きっといつまでも変わらない…。
ううん…。
ずっと続くと信じてる。
目に見えない絆を、ちゃんと感じてるよ。
後に押し寄せる暗い闇に気付かないまま、一時の穏やかさを、あたしは感じていた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちたゆ(プロフ) - アン様ご無沙汰しております(*^^*)続編の方なのですが書き留めていたかなりのページ数が消えてしまい意気消沈しておりました…。励みになるお言葉ありがとうございます(*^^*)頑張ろう…またのぞいてみて下さい！ (2018年10月1日 21時) (
レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
アン(プロフ) - 久々来ちゃった( *´艸｀)やっぱ、吸血鬼さん大好きやわ〜〜♪( ´▽｀) (2018年9月30日 23時) (レス) id: 64b2d92415 (このIDを非表示/違反報告)
もちたゆ(プロフ) - ひろ様、コメントありがとうございます(*^^*)なかなか物語を進められず申し訳ございませんm(__)m必ず完結させますので、どうか最後までお付き合い下さい(*´ω｀*)とても励みになりました。ありがとうございます！ (2017年5月16日 22時) (レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - こんばんは、はじめまして。続きが気になって一気に読みたいのですがそうもいかず、ヒマを見つけては読ませて頂いてます。挨拶は最新ページまで読んでからと思っていたのですが、もう少し時間がかかりそうなので...どうなるの？吸血鬼の正体を想像しながら読んでます。 (2017年5月16日 20時) (レス) id: cbdd06dc5c (このIDを非表示/違反報告)
もちたゆ(プロフ) - 聖也様、コメントありがとうございます(*^^*)容姿完璧な主人公に対抗するには、内面の美しい良い子でなければいけないと思いました〜。でも少し可哀想だったでしょうか…( ´-｀)是非最後までご覧になってみて下さい。よろしくお願い致します(*^^*) (2017年5月5日 22時) (レス) id: 5fbd8900a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちたゆ | 作成日時：2017年3月9日 18時
