最低な日々に｜wtnb (ページ6)

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『…伊沢さんを、呼んで欲しい』

「……俺じゃだめですか？」

「…ここにいるのは俺です……なのに…なんで伊沢さんなんですか？」

『私の秘密は…伊沢さんしか知らないの』

「なら俺にも『駄目！』」

『言えないの……あんな、あんな惨めなこと……こうちゃんには……』

「A！！」

こっちに駆け寄ってくるひとつのシルエットは、伊沢さんだった。

私は、こうちゃんの胸元から離れ、鞄を手に取った。

「何があった、昨日」

『…消されたの、伊沢さん達の連絡先…。もう、これ以上会えない。私はあの人の元で生きていくことしかできないの……。今も電話が掛かってきてたし、私もう、行かないと…。』

「待ってください」

声を上げたのはこうちゃんだった。

「消されたとか、会えないとか、あの人とか！！意味わかんないんですけど！俺……。俺もAさんの力になりたいのに、なんでいつもいつも、伊沢さんだけなんですか……」

その目には涙が浮かんでいた。

『ごめんね、こうちゃん。』

私の目にも同様に浮かんだ涙は土の上へ落ちて染みを作った。

『私は、こうちゃんみたいな人と付き合いたかったなぁ…。私を大切にしてくれる人。そしたら私も、幸せになれたかな。』

声は震えて、顔には自然と歪な笑顔が浮かんだ。

「今からでも遅くないですよ！！！俺、Aさんのこと『もういいの』」

『もう、行かないと』

そう言って、私は彼のいるアパートへ歩いた。

「Aさん、そんなの…格好悪いです。
そんなんじゃ何も変わらないですよ！！」

帰り際こうちゃんに言われたその言葉は、

私の心に酷く焼き付いて離れなかった。