最低な日々に｜wtnb (ページ12)

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『別れよう』

そう切り出したのは、暖かい日差しがカーテンから漏れ出していた、土曜の朝の事だった。

「嫌だ。なんで？……やっぱり、浮気してたんでしょ？」

血相を変えて、彼は私の肩を掴んだ。

「頼むよ……。俺、お前がいないと生きていけない……。」

泣きながらそう言う彼の心の内はきっと私欲に塗れている。

『ごめん、私はもう…耐えられない』

「…………ふ～ん…あっそ……じゃあ、Aを殺して、俺も死ぬよ……」

俯いたその顔は少し笑っているように見えた。

『な、何言ってるの？』

彼はペンケースからカッターナイフを取り出し、その刃を私に向けた。

『なんで、そんな』

言い終える前に刃は私の喉元に触れ、丁度その時、インターホンが鳴った。

『助けて！！！』

私は破裂しそうな心臓を抱えたまま、そう叫んだ。

このドアの向こうにいる誰かが、こうちゃんなら、きっと。

(ｶﾞﾁｬｯ)

そう思った時、リビングのドアが開いた。

「Aさん！！」

「っ誰だよこいつ！！」

彼は私の喉元からカッターを外し、もう一度腕を伸ばして構えた。

「Aさん、一緒に逃げましょう！！」

こうちゃんが私の手をとった後、彼の怒号と共にこうちゃんは倒れた。

『こうちゃん！！！！』

フローリングにぽたぽたと零れる朱殷は、まるであの日流した涙のようだった。

「お前のせいだ」

そう耳元で呟き、彼は部屋を後にした。

数瞬の間で私の腹部に刺さったカッターナイフは、いやに現実味を帯びていて、子供の頃によく見ていた刑事ドラマを思い出した。

手のひらについた血をじっと見つめ、痛みが私を蝕む中、私はもう何も考えられなくなった。