一瞬の永遠を、きみと (ページ27)

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『も、もう無理……』

緩い傾斜の坂道を、洪水みたいに汗を流して息も切れ切れ登っていた。

傾斜は決してきつくはないけれど、それでも山道は山道。

普通なら、こんな安物自転車ふたり乗りで通るような道じゃない。

「A、ふらふらしてるけど」

『死ぬ……』

さっきまで死のうとしてたやつが何言ってんだって感じだけど、これは本当に死ぬ。

むしろまだ生きているのが不思議なくらいだ。

踏んでも踏んでも回らないペダル。

真っ直ぐに定まらないハンドル。

破れそうな肺。

止まりそうな心臓。

ぼやける視界。

止まらない汗。

足に、少しも、力が入らない。

──キッと短いブレーキ音が鳴った。

自転車を止めるためっていうより後ろに下がっていかないためのブレーキだ。

途端に倒れそうになったけれど力を振り絞って両足を地面に踏ん張った。

うな垂れたら、鼻の先からハンドルにぽたぽた汗が落ちた。

「A、どうした？」

後ろから声がしたけれど、答えることはできなかった。

肺がきりきりして、心臓も爆発していて、声を出すどころか呼吸をするのも精一杯なんだ。

少しだけ顔を上げる。

傾斜の緩い、曲がりくねった坂道は、まだ先まで続いている。

　大きく息を吐いた。

まだだめだ、ここで止まっちゃだめだ。

もう少し、頑張らないと。