君は空を飛べない【呪術廻戦】 (ページ23)

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８話ページ23

10月31日。渋谷で五条悟が封印された。そう聞いた俺は急いでそこに向かう。
幸い関東での任務だったので決着が着くまでに到着できるだろうと予想された。

「なぁ、Ms.清岡」
「ふは、何それ。Mr.東堂」

俺の隣は清岡A。他でもない、俺の尊敬する姉弟子だ。彼女の常に凪いでいる心は、俺の、いや、呪術師全員の目指すべき境地だと確信している。

Aさんに初めて会ったのは小３の夏。九十九由紀に弟子入りしたての頃だった。あれは衝撃的な、いわば春の稲妻のような出会いだった。

「君が、東堂葵くん？」

彼女はある日唐突に、俺の前に現れた。一目見て美しい女性だと思った。セミロングの艶のある黒髪、整った顔立ち。そして極めつけはその堂々とした立ち姿。この女、強い。子供ながらにそう思った。そしてそれは間もなく確信に変わる。
初めて手合わせをしたのはその年の冬。彼女はその日、春から高専の教師になるから葵くんには会えなくなるかもね、とか、君も早くおいでね、とか、色々言っていた。元々それほど会っていたわけではなかったがそれでも少し寂しいと思って、気付くと空き地に２人、拳を構えていた。
結果はもちろん完敗だった。呪術のじの字も満足に習得していなかった俺だ。当然だった。
だが俺はその結果を得て良かったと今も心の底から感謝をしている。敗北から学ぶことがあるというのは真実だ。
あのとき俺のことを「センスがある」と言い切った彼女は恐らく非常に目が良かった。シン・陰流を１年で習得したと九十九由紀が言っていた。彼女の才能は九十九由紀にも認められていた。

そんな素晴らしい呪術師である清岡Aが今隣にいるわけだが、彼女は俺と新田新の任務地にふらりと現れた。

「最近由紀さん見てなくない？」
「そうですね・・・だがきっと今日会う」
「そうだね。五条、そして渋谷救出。私たちも頑張らないと」
「五条悟が救出不可な場合は」
「私は被害を最小限に抑えてなるべく早く撤退したいところだけど」
「そんなこと言わんでくださいよ、あなたは１級、こっちの主戦力なんですよ」
「どうだか。じゃあ葵くんと新田くんが地下５階に夏油がまだいるか確認して。私は先に上がるよ。いいね？」

Mr.東堂。Aさんはそう言って再びクスクスと笑った。新田の不要な混乱を回避するため夏油は死んだはずではという疑問は俺たち２人だけで留めた。