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6話 ページ21

「七海くん、おかえり」

振り返るとかつての先輩、Aさんがいた。ああ、高専に戻って来たんだな、と実感する。

「お久しぶりです、Aさん。お元気でしたか」
「ふふ、変わんないねー。見ての通り元気だよ。4年ぶりくらい?何で戻って来たの」
「術師はクソでしたが会社員も同じでした。ならより適性のある方に、と」
「ふーん?」
「いや・・・曖昧な言葉になりますが、やりがい、ですかね・・・」
「ハハッ、真面目だねぇ七海くん。頑張りすぎないでね。まぁいいや、地獄におかえり」

Aさんはヒラヒラと手を振りながら私に背を向けて歩きだしていた。
頑張りすぎないで、なんて私に言うことではないと思うが。

星漿体任務のとき、一緒に那覇空港まで行った。空港から出られないのに沖縄だー!とはしゃぐ灰原を眺めながら2人で話したことがある。

「あの、言いにくかったらすみません、夏油さんと付き合ってるんですか」
「え"っ・・・知ってたの」
「まあ、あからさまですし」
「そ、そう・・・バレてたかぁ、灰原くんも知ってるの」
「いいえ、言ってませんから多分知りません」

彼女は明らかに動揺して顔が赤かった。柄にもなく、可愛らしいな、と思った。
あの頃、私たちはただの子供だった。
五条さん、夏油さん、Aさん、家入さんは確固たる強みを持っていた。私はそれに届かなかった。届かぬまま逃げてしまった。
五条さんは特別だ。それは灰原が死んだときに改めて突き付けられた紛れもない事実だった。
Aさんの異様なセンスの良さに気付いたのはその後だ。

また、彼女のメンタルは呪術師のお手本のようだ。
夏油さんが離反したことが分かったとき、彼女は運悪く任務に出ていた。五条さんと家入さんは夏油さんに会ったらしい。Aさんだけ会えなかったと聞いた。
それでも翌朝会ったとき、彼女は普段通りにこやかに笑っていた。まるで何もなかったかのように。
私はそのことでも、呪術師としての素質、格の違いを見せつけられた気分だった。

普通でないことが普通の術師という職業に、彼女は最適化していた。

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さなひ - 控えめに言って好きな物語!! (2月17日 23時) (レス) @page1 id: b4a06095b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桃茶 | 作成日時:2024年2月17日 23時

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