君は空を飛べない【呪術廻戦】 (ページ12)

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１１話ページ12

時計を見ると６時。私は嫌な汗をかいていた。
Aを起こしに部屋に行くと彼女はもう起きていて布団を畳んでいた。

「夏油、おはよう」
「ああ、おはよう」
「昨日は特に何も感じなかったよね。まずは聞き込みかな」
「そうだね、準備ができたら呼んでくれるかい」
「あー、私１人の方がいいかも。夏油ちょっと見た目厳ついし。２時間経って戻って来なかったら迎えに来てくれる？」
「・・・１時間にしないか」
「ふふ、分かった。１時間ね、じゃあ行ってくるから、よろしくね」

Aが何となく心配だった。根拠はなかった。しかし嫌な予感というものは当たるものだ。
１時間経ってもAは戻って来なかった。
急いで村長――あとから調べると村長ではなくただのその土地の有力者だったが――の家に向かうと、何かの儀式が始まっていた。

「すみません、これは何です？先日ここに来たものでして」
「ああ、祭りさ。ようやく生きのいい生贄が見つかってね」
「・・・生贄？」
「そうさ、さっき自ずからこの儀式場に来たよ。やはり神に導かれたんだろうかねぇ。おや、そういえばお前さんの服装も、あの方のご指定によく似ているねぇ」

血が逆流する感じがした。Aはどこにいる？
「あの方のご指定」？高専の制服を狙わせているとしたら呪詛師か。なるほどな。だから任務に行った京都の学生がほぼ行方不明なわけだ。

「生贄を見ることはできますか？」
「ああ、こっちにおいで、儀式の最中だから静かにね」

儀式場の中央を見ると、拘束され顔に怪我をしたAが何か高い台に乗っている。
奥には恐らく「あの方」、呪詛師がいた。
それはこちらを一瞥し、またAに目を向け直した。
私はそれをすぐに殺した。造作もなかった。村人は皆呪霊が見えないようなので私が殺したことも分からなかったようだった。

「A！君ほどの術師が何で捕まっているんだ！怪我もしてるじゃないか！」
「夏油、ナイスタイミング！いやぁ、夏油が助けに来てくれると思ったし私が抵抗するのもどうかと思ったから」
「オイ貴様！今すぐ生贄を離せ！気色の悪い！これをどうするつもりだ！」
「ちょっと！この人は人間です！そもそもあなた方の依頼で来ているのに、怪我までさせて、あんまりじゃ」
「いい、夏油。大丈夫。ありがとう」

分からなかった。なぜAは笑っている？それに、呪霊でも呪詛師でもなく非術師に怪我をさせられたのに、抵抗もしなかったのか？